糖尿病の恐怖

 

子どもは1型、中年は2型という糖尿病の常識も崩れつつある

、糖尿病とはどんな病気なのか。車がガソリンで走るように、人体の

 エネルギー添まグルコース(ブドウ糖)である。これが血液に溶けて全身を回り、細胞に利用されることで、私たちは元気に活動できる。

 血液中のグルコース濃度(血糖値)はとても大事だから、インスリンという膵臓から放出されるホルモンによって約100(血液100回中に溶けているグルコースをmgで表現)に厳しくコントロールされている。

 だが、ウイルス感染や膵臓障害、インスリン遺イ云子の変異によって異常なインスリンが生産される、あるいは、インスリンレセプター遺伝子の変異によって、インスリンが効かなくなることがある。これではグルコースが細胞に利用されないから、血糖値が慢性的に高くなる。

 そうなると過剰のグルコースが毛細血管をふさぐので、そこから先の細胞に血液が流れにくくなる。だから、糖尿病の症状はゆっくりと全身におよぶが、自覚症状はほとんどないから、放置しがちなのだ。そのうちに、口が渇いて、いくら食べても空腹を感じるようになる。さらに長い期間放置すれば、さまざまな合併症に襲われる。

 代表的な合併症には、しびれや痛みといった神経障害、インポテンツ、網膜症、腎不全、足の壊疽などかおる。糖尿病によって発生する網膜症は、眼底の血管が詰まったり出血するもので、日本では年間3000人以上が失明している。成人での失明の最大の原因は糖尿病なのである。

 また、血液をろ過する糸球体というフィルターが不調になると腎臓病が発生する。このとき、尿に出るべき老廃物や毒素が腎臓に蓄積されて腎不全とな、人工透析が必要になる。糖病による腎不全から透析をスタートする人は年間約1万2000人で、人工透析患者の約3分の1を占める。さらに、ちよ糖尿病の合併症としては。


 だが、糖尿病の合併症は、気づいたときにはかなり進行していることが多い。足音もなく、ひっそりと忍び寄るから、サイレントキラー(静かな殺し屋)というニックネームがついているほどだ。回。尿病には1型と2型かおる。1型は、子どもや青年に多く見られるもの

  で、それまでは健康だったのに、突然、発症する。これと対照的なのが、2型で、発症時期は中年(45歳)以降であり、症状が少しずつゆっくり現れる。

 1型は、糖尿病全体の10%以下にすぎない。1型の原因は、膵臓の細胞が破壊されたために、インスリンが生産されないことだが、まれに、インスリン遺伝子の変異やインスリンレセプターの変異によっても起こる。

 膵臓の細胞が破壊されるのは、免疫系が暴走して、敵味方の区別なく細胞破壊におよぶためと思われている。こうした免疫系の暴走の原因は、環境からの毒物に対するアレルギー反応やウイルス感染が考えられている。

 1型の患者が1人でもいる家族の場合、他のメンバーがこの病気にかかる確率は6%で、これは一般人口における発生率の20倍である。

 この数字だけを見れば、1型は遺伝病のように思える。しかし、遺イ云的体質がまったく同一なはずの一卵生双生児で1型の発症率を見ると、わすか36%しかなかった。血縁関係にある家族同士の発症率6%と比べれば、36%は確かに高い数字だが、もしも1型が完全に遺伝子だけで決まっているなら、-卵生双生児のうちの一方が発症したら、もう一方も必ず発症しなければならない。だから、1型の発症要因は、遺伝子だけではないことがわかる。

 ある疾病が特定の家族に集中して発症する傾向が認められるからといって、それを「遺伝子のせいである」と結論づけるのには無理がある。なぜなら、家族は、衣食住の環境を共有しているから、その環境に発症の原因があれば、いっしょに病気にかかることも不思議ではないからだ。顫型は、不足しているインスリンを注射すれば、血糖値は正常値にもどる。インスリン依存性糖尿病と呼ばれるのは、このためだ。

 一方、2型は、中年以降の肥満者に多く見られ、糖尿病全体の90%以上を占める。私たちが恐れるのはこの2型で、遺伝的な要因、肥満、運動不足、ストレスによって発生する。膵臓は正常に機能し、インスリンを放出するのだが、ただインスリンのはたらきが弱いのだ。これをインスリン抵抗性という。このため2型は、インスリン非依存性糖尿病とも呼ばれる。

 太ると2型糖尿病になりやすいのは、脂肪細胞がインスリンの効き目を低下させるTNF- a (腫瘍壊死因子α)やFFA(遊離脂肪酸)といった抵抗性物質を放出するためである。

 TNF-arはインスリンのはたらきを抑制し、FFAは細胞がグルコースを取り込むのを妨げるから、太ると糖尿病が発生しやすくなる。

 2型はかつて、天ぷら、しゃぶしゃぶ、大とろ、サーロインステーキなど、脂肪の多いおいしい食物を食べる、中年の金持ちの病気と揶揄されてきた。そして、これまでの常識では、子どもの糖尿病は1型、中年の糖尿病は2型、のはすだっだ。

糖尿病には1型と2型があり。1型は子どもや青年に多くみられ、突然、発症する。2型は発症時期は中年(45歳)以降で、症状はゆっくり進行する


私たちが恐れるのは2型のほうだ