2型糖尿病の子どもが急増

 

糖尿病は「アジア人の病気」の代名詞になるのは時間の問題


 、隆二(仮名)くんは小太りの小学6年生。足にできた発疹がなかなか治らないので、近所の病院を訪問した。そこで一連の血液検査を行つたところ、長い問、中年の糖尿病として知られてきた2型と診断された。

 遺伝や生活習慣を考えれば、隆二くんが糖尿病を発症するのは少しもおかしくない。彼の2人の祖父、父も叔父も叔母も老年になってから、糖尿病を発症していたからだ。

 しかも隆二くんが認めるように、彼の生活習慣は健康的なものとはほど遠い。ます、毎日、数時間もコンピュータゲームで遊ぶ。食べることも大好き。ソファーに座り、テレビを見ながらポテトチップを1袋も食べる。ファーストフードが大好きで、ハンバーガー、フライドチキン、ピザを、1週間に何度も食べ、ソーダもよく飲む。

 だが、別の意味では驚きである。まだ12歳の隆二くんが、中年の糖尿病の代名詞である2型の被害者になるとは、どうしたことか。

 実は、隆二くんばかりでなく、わが国とアジアの子どもたちに2型が急増している。東京都のデータを見ると、糖尿病の中学生での発症率は10万人当たり4.35人(1976~1980年)からフ。56人(1991~1995年)と過去20年間に1.7倍に増えた。また、横浜市の学校検尿(1982~1996年)では193人に糖尿病が発見されたが、そのうちの約80%が2型であった。

 他のアジア諸国では、データはまだ整理されていないが、子どもの2型糖尿病が著しく増えていることは、関係者の間では周知の事実となっている。尿病はこれまでにない挙動を始め、中高年や金持ちの美食家を襞うという常識が破られている。糖尿病は、もはや裕福さや年齢に関係なく発症するようになった。アジアにおいて糖尿病は、高級マンションの住民、スラムで寝起きする人々、子どもたちを分け隔てなく襲っている。

 その数たるや恐るべきものだ。WBOは、2003年現在、世界に1億フフ00万人いる糖尿病患者が、2025年には約3イ意人を超えると予測している。

 オーストラリアにある国際糖尿病協会の会長ポール・ズィメットは、「このままいけば、糖尿病は史上最大の流行病になるのは確実である」と憂慮している。

 世界で糖尿病が最も蔓延する国を多い順番に5つあげてみよ、というと、ほとんどの人が、アメリカを筆頭に日本や西ヨーロッパ諸国をあげるだろう。だが、それは大間違いだ。 2002年のWHOの調査によると、インドの32フ0万人、中国の2260万人、アメリカの1530万人、パキスタンの880万人、日本の710万人である。

 世界で糖尿病が最も蔓延する5か国中、なんと4か国がアジア諸国なのである。そのうえ、現在8900万人のアジアの糖尿病患者が、2025年には1億7000万人、すなわち、20年後には現在の2倍近くに増えるとWHOは報告している。

 かつて裕福な人の病気とされていた糖尿病が、「アジア人の病気」の代名詞になるのは時間の問題なのである。

 アジア人に糖尿病が急増している理由は5つ考えられる。

 第1は、食物の欧米化である。かつての穀物や魚中心で低力口リ-の食事から、肉やチーズなど高脂肪・高カロリーの食事へと急激に変わったことだ。

 第2は、屋内で過ごす時間が増えたこと。かつでの仕事は農作業が中心で、肉体を駆使して行っていたが、今ではテクノロジーの進歩によって、部屋のなかでの軽作業に変わった。

 テレビのUモコン、自動ドア、携帯電話、自動洗濯機、自動掃除機、自動食器洗い器が日常生活に押し寄せてきた。

 たとえば、ロンドン大のプレンティスは、携帯電話のおかげて公衆電話を探して歩きまわる距離が年間10kmも減ったと指摘している。また、テレビのリモコンを使い、立ち上かってャンネルを変えにいく運動をしなくなれば、年間、0.5 kg太るとも語っている。目クノロジー化のおかけで、私たちの日常生活でのエネルギー消費量は、

   年々減少しふつうに生活していれば、運動不足に陥ってしまうのである。

 第3は、クルマ社会になった。クルマの利用が増え、歩くことが減少した。

 第4は、ストレスの増加である。ストレスを感じると、身体は副腎皮質ホルモンのコルチゾールを生産してこれに対抗する。このホルモンは筋肉や骨のタンパク質を分解してグルコースに変え、血糖値を高める。

 タイでは糖尿病が農村から都会に出てきた人に多発していること、アメリカでは看護者に血糖値の高い人が多いことも、ストレスが血糖値を高める証拠となっている。

 そして第5は、節約遺伝子の存在である。

アジア人に糖尿病が急増している理由として、次の5つの理由が考えられる。

 ①食生活の欧米化

 ②屋内で過ごす時間の増加

 ③車社会になり運動不足

 ④ストレスの増加

 ⑤節約遺伝子の存在