(Column)無作為化対照比較試験(RCT)

 

 もっとも質の高いエビデンス(根拠)が得られる研究デザインのことである。ある鎮痛剤を飲んだ後に、痛みが治まったからと言って、それが効果を意味するとは限らない。たまたま痛みが治まる時期に効果のない物質を飲んだ可能性があるからである。より科学的な研究方法として、実験群と対照(control)群とを比べる対照比較試験(controlledtrial)が生まれた。対照群には、見かけ上は実薬と同じだが薬理効果のないもの(偽薬、プラセーボ)を飲ませたりして比較するのであるo

 しかし、これでもバイアス(系統的な偏り)が起こりうるので十分でないという批判ができる。被験者に、新しい薬を飲む実験(臨床治験)に協力してほしいと頼んで、引き受けてくれた人を実験群に、断った人を対照群にしたとする。この場合、医師や新しい薬への態度の違いというバイアスが生じる。依頼した医師を信頼しており、好奇心旺盛な人ほど協力してくれるのでそのような人が実薬群に多くなる。一方、医師のことをあま引言頼しておらす、「モルモット代わりはいやだ」という人や「新しいものは怖い」と考え拒否した慎重派ほど対照群になる。この両者を比べると、仮に薬の効果が全くなくても、医師に対する遠慮も加わって「良くなった気がする」と答える人が実験群に多くなるであろう。

 このようなバイアスを避けるために行われるのが、無作為化(ランダム化)である。協力してくれる人を、例えばサイコロを振って偶数が出たら実験群に、奇数が出たら対照群にと、本人の意志や研究者の意図が入り込まないように無作為に振り分けるのである。これが無作為化対照比較試験(randomized contro∥ed trial、RCT)である。無作為化臨床試験(「andomized clinical study)とも呼ばれる。ただし、実施が困難あるいは不可能な場合も少なくない。