否定的感情と肯定的感情(介護継続意志など)

 

 研究が進むにつれ、介護者が体験する心理・感情には、介護負担感など否定的な側面だけではなく肯定的な側面もあることが注目されるようになった。例えば、中谷は介護負担感を構成する12項目(表2参照)の中には、「4.世話の苦労はあっても前向きに考えていこう」「n.自分が最期までみてあげたい」など介護継続意志と名づけられる側面があり、これは負担感とは独立した因子であったと報告している。また斉藤らは、介護満足感や介護に対する楽しみや喜びなど肯定的側面と、サリット(Zarit)らのThe Burden Interviewによりとらえた(否定的側面である)介護負担感とを同時に評価している。愛する対象である家族を介護することに、6割の家族介護者が達成感や満足感などを感じており、肯定的側面は介護負担感や客観的な介護時間とはやはり相関していないという。介護は、負担感と同時に肯定的感情も与えてくれる複雑な心理的体験であることを示している。