チーム・マネジメントの質を決める4要素

 


ケアプラン作成などではケアマネジャーやソーシャルワーカーが全体をマネジメントする場合などである。

 しかし、まだ各専門職間の境界が明瞭で、仕事の重なりは小さく、境界領域の課題への対応が遅れる危険がある。

 (4)統合モデル

 さらに統合が進んだモデルでは、情報がいっそう共有される。目標も各職種が自力で作るものとは質が異なり、他職種から提供される情報を生かし共同(synegy)作用を発揮したものになる。救命のように医師の判断が最優先されるゴールでなく、QOLのように他職種、さらには本人の意見も反映したゴールが必要なリハビリテーションや長期ケアにふさわしいモデルである。

 職種間の仕事の重なりが大きくなり、重要課題が職種の専門性のはず間に落ちてしまうことがなくなる。例えば、歩行訓練がゴール達成の鍵を握る場合には、理学療法士も、作業療法士も、看護師も、医師もそれぞれのかかわる場面で歩行訓練を行う場合などである。

 このような千-ムを運営するリーダーには多くの資質が求められる。他職種の意見を引き出し、それらを反映した豊かなゴールを設定し、スタッフの力量を踏まえた適切な仕事の分担、権限委譲をしつつも、統合を図らなければならない。チームとしての力量を高めるために必要な、適切な学習課題の設定も必要である。

1)ゴール

 協業・統合を進める鍵は、ゴールがチームとして共有されていることである。移動や歩行訓練を担当する理学療法士の仕事を例にとると、施設に入所予定の人であれば居室から食堂まで100m平地歩行ができることが重要かもしれないが、2階に寝室がある自宅に退院する人では、平地を100m歩けることよりも、階段昇降できることのほうが退院後の生活では重要であり優先すべきゴールとなる。チームとしてゴールを共有して初めて、各職種か担うべき仕事が明瞭になる。

2)多面的評価と共通認識

 チームで共有するゴールを設定するためには、対象者を多面的・総合的にアセスメントすることが重要である。脳卒中病棟でも、CGAでも、ケア・マネジメントでも、従来の方法よりも総合的に評価している点が特徴である。ここでは、それぞれが異なる専門性を持ち、異なる側面に強いこと、つまり分業の側面が重要となる。

 しかし、各専門職が集めた情報が統合されなければ、共有されないバラバラの目標になる。前述の例でいえば、理学療法士が平地歩行の距離を延ばすよりも階段昇降の自立をめざすほうがふさわしいかどうかは、麻痺の程度を詳しく評価するなど、理学療法士の専門性を追求してもわからない。ソーシャルワーカーが集めた介護力や家屋構造などの情報で退院先の予測ができて初めて可能となる。

 異なる専門職が患者の状況や目標について共通認識を持つためには、他職種が報告で使用する専門用語や、そのことが持っている意味をお互いに理解することが必要である。言い換えれば共通認識を持つことが、チームとしての学習課題となる。よくマネジメントされたチームは、カンファレンスだけでなくチームとしての学習会や、1年間の仕事をまとめ振り返る場を持っている。それは、これらが共通言語や共通認識を得るために必要だからである。

3)適切なモデルの選択

 状況、対象者、チームの力量などにより、適切なモデルは異なる。チーム構成員の専門性の違いや力量によっても影響を受ける。チームにも、病棟の看護師チームのように構成員が同じ専門性を持っている千-ムと、リハビリテーションチームのように異なる専門性を持つ多職種で構成されるチームとがある。同じ専門職で構成される場合、知識や技術が共通であるため分業や協業は進めやすいが、個々人の専門性は発揮されにくい。一方、異なる専門職種で構成されるチームの場合、専門性は発揮されやすいが、主な関心領域や専用用語の違いのために、統合には意識的な努力が必要である。また、職種間の境界にあたる課題で、どの専門職が担当すべきか不明な問題や、どの専門職でも担当しうる問題を、誰が担当するのかなど、分業の過程で行き違いが生じやすい。適切なモデルを選択し、それぞれの長所と短所を考え、必要な手だてをとることが必要である。