介護保険政策のアウトカム評価

 

 文部科学省学術フロンティア推進事業として日本福祉大学に設置された「地域ケア研究推進センター]では、介護保険政策評価に取り組んでいる。データを提供する保険者数が140あまり、要介護者のデータ数で7万人を超えるなど大規模であること、アウトカム評価にまで踏み込んでいることなどが特徴である。その成果は厚生労働省老健局で報告の機会を得るなど、関係者から注目を浴びている。ここでは、その一端を紹介する。

D アウトカム評価の重要性

 アウトカムとは、政策介入によりもたらされる結果、効果や成果のことである。それは、政策の質を決める3要素-インプット、プロセス、アウトカムーの一角を占める。

 従来の政策評価は、インプットやプロセスに関するものが中心であった。しかし、いくら多くの(費用や人手などの)資源をある政策やプログラムに投入(インプット)していても、それが利用されなくては意味がない。そして、プロセスにおいて多くのサービスが生み出されていても、それによる成果が上がっていなければ、見直しが必要である。つまり、アウトカム評価は、政策評価をするうえで、きわめて重要な位置を占めるものである。

1つは「自立支援」という政策目標に対応する「要介護度変化」の指標である。これは「要介護度維持・改善率」に代表される。もう1つは「在宅支援」という政策目標に対応する「居所変化」である。それは「在宅維持率」(在宅でサービスを受けていたもののうち、1年後も在宅でサービスを用いている率)に代表される。この2つは、保険者が業務データとして持っている[要介護認定データ]あるいは「給付実績(レセプト)データ」の2時点の変化を比較することにより作成した。

 もう1つ、独自に行った追加調査から得られる客観的な指標として、介護の質(介護放棄・虐待など「不適切な介護」)を評価した。これは「尊厳のある生活を支えるケア」という政策目標が、どの程度達成されているかを見ようとしたものである。

 (2)主観的指標

 要介護者・介護者の主観的な側面に対するアウトカムも評価した。具体的には、介護者の主観的幸福感や、うつ、介護負担感などである。これは「介護の社会化」という政策目標が成果を上げ、介護者の心理的な苦痛をどの程度軽減しているのかを評価しようとしたものである。