学習スタイルと学習サイクル

 

 根拠に基づく判断をどれほど重視するのかには、その人や組織、分野における学習スタイルの違いや学習サイクルをどの程度意識的に回しているのかが影響している。

D 学習スタイル

 学ぶスタイルは、次の4つのアプローチに分けられる。①直感的アプローチでは、日々の経験に学ぶが、それを言葉で残寸ことはせず、新しい場面で直感的に学ぶ。②偶発的アプローチでは、新規なもの、意外なものからの発見を重視する。③後方視的アプローチでは、経験を振り返り、そこから教訓を引き出す。④前方視的アプローチでは、目標志向的・意図的・計画的に学ぶ。

 多様なアプローチがあることは、「経験する」「経験を振り返る」「教訓を引き出す」「次の段階を計画する」のどこにおいても、学習や研究が可能であることを意味している。どれか1つのスタイルが優れているわけではなく、いずれも意義がある。その中でEBPは[次の段階を計㈲]し「前方視的アプローチ」を重視する、いわば目標指向型アプローチに位置づけられる。


2)学習サイクル

 質の高い実践や政策のために学ぶべきものは知識だけではない。技術・技能や経験、洞察力も必要である。また、それらを組み合わせて「知ること(認識」から「できること(行動・実践や「新しい知識や方法を生み出寸(創造・研究)への展開が必要である。そのプロセスを考えてみると、サイクルを描くことができる。

 まず、「見たこと・聞いたことがある」から「知っている」を経て「わかっている」にいたる。「実践のための学習サイクル」で見ると、わかったことを「まねできる」段階を経て、自分なりに「工夫」を加えて[よりうまくできる]ようになる。その方法を言葉に(言語化)すれば、それは他の人から見て[知るべきこと]となる。図2の下に向かう[教育・研究のための学習サイクル]で見ると、「知っている」だけでは、人に説明できない。「説明できる」ためには「わかっている」ことが必要である。「説明できる」のにも、うまい、へた、がある。相手に「よりうまく教えられる」ためにはやはり[工夫]が必要である。その工夫によって生まれた新しい説明(知識や考え方)を何か言語化すれば、それは他の人にとって[知るべきこと]となる。
 

 [実践のための学習サイクル]と[教育・研究のための学習サイクル]のどちらでも、受動的、能動的な段階をへて、やがて「工夫」に至る。それが創造的一研究的な活動であり、他の人に伝達可能となるように言語化する段階と合わせて知的生産活動と呼ぶことができる。

医療福祉マネジメント:近藤克則著より