研究

知識創造のための4つの場

 SECIモデルに基づくと、知識創造には、相互作用をする4つの[場]が不可欠であることがわかる。まず、個人と個人の相互作用によって「共同化」がおきる[創発場]である。次に、集団的な相互作用がおきる場で、共通言語・コンセプトが生み出され、「表出化」が進む「対話場」である。3つめは、「連結化」が進む「システム場」で、そこでは集団的に、文書・書籍・データなど(実体験ではない)バーチャルな媒体を用いた相互作用が生じる。最後が「実践場」で、個人が形式知を内面化(自分のものに)する。それは、個人的でバーチャルな相互作用と言うことができる。

 医療・福祉マネジメントを巡る現状を、このSECIモデルと4つの場の視点で捉えてみると、「表出化」、つまり経験を記述し、形式知を増やす「研究」が不足している。そのために「連結化」(体系化)も遅れている。これらを促進するには「対話場」[システム場]を拡充することが必要であり、臨床・実践家が集う社会人大学院や研究会、学会が、そのような場にあたると思われる。

 研究のプロセス

 研究、つまり科学的な根拠づくりに必要なプロセスを、表2に示した。まず、蓄積されている多くの先行研究の成果を学び、すでに「わかっていること」だけではなく、「わかっていないこと」を明らかにする。その中から、意義のある研究課題を選び作業仮説を設定し、「イ可を明らかにしたいのか」という研究目的を定める。次に、どのような対象と方法を用いれば、その作業仮説を検証できるのかを考え、研究計画を立てる。事実を、質的な情報なら文章として、量的な情報なら数値データとして記述し、それを集める。次に、集めた質的・量的データを比較・分析して、作業仮説を検証する。そして、得られた知見の信頼性と妥当性を考察する。得られた結果はどの程度一般化して良いのか、先行研究とどこが一致し、何か異なるのか、その理由は何か、何か新しい知見なのか、などを考察する。最後に第三者が追試したり、方法や推論を批判したりできる(反証可能な)形で、研究方法と結論に至るプロセスを説明した論文にまとめる。

 このプロセスも、やはりマネジメント・プロセスとみることができる。先行研究の到達点を「アセスメント」し、研究目的という「ゴール」を設定し、研究「プラン」を立てる。そのプランを「実施・モニタリング」し、得られた知見を考察において「事後評価」する。大学院であれば指導教員による[事後評価]、雑誌に投稿すれば査読者や読者による「事後評価」も受けることになる。

医療福祉マネジメント:近藤克則著より