医療・福祉マネジメント研究の研究課題

 

 まず、実践(practice)から、プログラム(program)、政策(policy)まで対象は広い。この中で、欧米諸国に比べ日本で遅れていると思われるのは、プログラムレベルの研究である。

 また、他分野で蓄積されてきたマネジメントの法則や手法が、どのような条件の下であれば医療・福祉分野にも適応できるのかを研究課題とすることができる。例えば、ミッションやゴール、リーダー、トップ・マネジメントの重要性、チームや組織、事業体のタイプによるパフォーマンスの違いなどである。

 逆に、他分野とは異なる医療・福祉分野の特性に焦点を当てて研究課題を設定することもできる。例えば、狭義のマネジメント(経営)であれば、金銭表示が指標として便利だが、医療・福祉分野で目標とすべきQOL (quality o凵ife)を、金銭表示することには異論がある。では、何を指標としてQOLを捉えアウトカムを測るべきなのであろうか。 24時間にわたる生活ニーズを相手にしたサービス提供や、NPOという組織、保健・医療・福祉「複合体」という事業形態、公定価格で報酬が決まっており競争的市場ではないことなどは、医療・福祉分野に特徴的なものである。さらに、医療・福祉ニーズを持つ人たちは低所得層に多く、社会保障制度なしには「需要」は生まれないこと、政策評価においても公正・公平という基準が重要であることなども、他分野とは異なる特性である。マネジメント・サイクルから見た研究課題また、マネジメント・サイクルに対応させて研究課題を考えることもできる。ロッジ(Rossi)の「プログラム評価研究の階層」をもとに、内容を加え表現を変えたものである。

 研究対象をプログラムに限定せず、ケア技術や政策も含め「介入策」としてまとめて考えれば、そのニーズに始まり、予後予測やゴール設定、介入プラン、実施プロセス(モニタリングにあたるであろ引、そして事後評価におけるアウトカム/インパクト、費用と効率の評価研究まで、マネジメント・サイクルの各段階に対応した研究課題が設定できる。