アリセプトの副作用

 

 比較的早めに出現してくる副作用としては、主に吐き気、胃のもたれ、食欲不振など、消化器系の症状があげられます。多少の食欲不振であれば、そのまましばらく様子を見ますが、吐き気を強く訴えたり食欲の減退がひどい場合は、ドンペリドン(商品名=ナウゼリンほか)などの吐き気止めやスルピリド(商品名=ドグマテール。ほか)などの胃薬を少量(五〇~一五〇㎎)処方して経過を見るとよいでしょう。

 消化器系の副作用は年齢が若ければ若いほど出現しやすいという特徴があります。つまり、六十五歳の人は七十五歳以上の人より吐き気が出現する可能性が高いのです。しかし、ここで服用を中止してしまっては、アリセプトの抗痴呆効果が期待できなくなってしまいますので、先に述べたような対処のしかたで副作用の軽減を図るようにします。

 こう書くと心配になるかもしれませんが、実際には全体の五%以下の人にしか副作用は出現しません。また、アリセプトの副作用については、現時点では、重大なものは認められていません。

 アリセプトの服用を開始してから一週間経過した時点で先のような症状が出なければ、服用量を五㎎に増やします。この時点で副作用が認められる場合は、さらに一週間経過を見たうえで、問題がないようであれば五㎎に増量します。

 ただ、こうした副作用は一時的なものですから、最初の二週間は三㎎、二週間後からは五㎎に増量するというように一律に対処法を決めてもかまいません。日本で保険が適用になる薬剤(当然アリセプトも含まれる)は一回の診療で十四日間分処方できることになっているので、そのほうがかえって実用的かもしれません。

 ちなみに、アメリカでは最初の二週間は五㎎から服用しはじめ、その後、一〇㎎まで増量していきますし、多少の副作用があったとしても投与しつづけるようです。これは体格の違いもありますが、薬についての考え方が日本と違うからです。アメリカ人の場合、多少の副作用があっても、効果があれば積極的に取り入れるというプラグマティックな考え方をしているのです。

 それはさておき、先ほど述べた消化器系の症状として、まれに下痢、便秘、腹痛などの副作用が出現することもあります。これら消化器系の症状はいずれも、アリセプトアセチルコリン神経系を賦活することに関係しています。それによって消化管の運動が影響を受けることがあるため、そうした症状が出てくると考えられるのです。

 ですから、胃潰瘍などの治療薬を服用している人は、胃潰瘍が悪化する可能性もあります。

 しかし、それぞれの症状に応じた消化器系の薬剤を使って、経過の観察を続けながら対応すれば問題はありません。

 また、アリセプトは肝臓で代謝されることもあり、肝障害が発生することもまれにあります。しかし、その頻度は三%以下ですので心配ありません。通院していれば定期的に血液検査が行われるので、すぐにチェックできるはずです。

 また、人によっては、血液検査で、肝機能や血中脂肪、腎機能などに関係のある数値が上昇することもありますし、片頭痛や手の震見といった症状が出る場合もありますが、これも一時的なものですから、当面、経過を観察するだけでかまいません。

 もちろん、この種の症状がアリセプトの副作用としてではなく、まったく別の原因で起こってくる場合もありますので、服用中に思いがけない症状が出たときは、すぐ主治医に相談してください。

『快老薬品』酒井和夫著より