認知症の診断方法

 

 医療機関では実際にどのような検査によってアルツハイマー型痴呆かどうかの診断を確定するのでしょうか。

 現時点においては、知的機能検査、心理テスト、画像診断などを組み合わせて総合的に判断する方法がとられています。

 まず、最初に行うのは問診です。問診は非常に重要で、聞き方が適切でなければ正確に状況を把握することができません。

 また、それぞれの患者さんには独特の背景があります。たとえば、家族に対してネガティブな感情をもっていることから家族を非難する作話(作り話)という行為に及ぶ場合もあれば、もともと知的レベルが高かったために生理的老化による健忘でも異常と感じられてしまう場合もあります。問診では、そのようなことを含めて客観的に判断することが必要です。

 一般に、その日の日付や曜日、自分の年齢、前回の受診日などが答えられれば、まず問題はありません。日付や年齢が多少不正確でも、気候に合った衣服が着られ、家事や買い物が支障なくできるのであれば、軽度と考えてよいわけです。

 アルツハイマー型痴呆の患者さんは、診察室では穏やかで普通のように見えることがよくあります。通常の会話も、そのときは理解しているように見えます。しかし、それをすぐに忘れてしまうことが特徴で、それは家族から聞き出さなくてはわかりません。

 いつ頃からおかしくなったかが季節単位(たとえば「今年の春頃から……」)、あるいは年単位(たとえば「二、三年前から……」)であれば痴呆の疑いがあります。というのは、うつ病の場合は月単位あるいは週単位、せん妄では何日からと、はっきりしていることがほとんどだからです。

 症状がとらえにくい痴呆の初期症状として、たとえば財布や金銭などを盗まれたと思い込むような被害妄想やうつ状態などが目立つということがあります。

 初期よりさらに以前の段階、つまり初期の初期では、患者さんが自分で気づき、一人で受診することもあるかもしれませんが、患者さんのそばで暮らしている家族や身近な人も気づいている場合は、できるだけその人が付き添っていくことが望まれます。

 どのような状態がいつ頃から始まったか、それから現在までの変化、肉体的な病気の有無など、患者さん本人からの情報は不正解なので、身近でよく状態を理解している人が的確にそれを医師に伝えることが有用です。そのような場合は、一般に、患者さんをひととおり診察してから検査などに行ってもらい、その間に付き添い人と話して情報を得るといったことが行われています。

『快老薬品』酒井和夫著より