「ミニメンタルステイト試験(MMSE)」「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」「N式構神機能検査」

 記憶や知的機能の障害が年齢相応の現象なのか、病気によるものなのか、診断が下しにくい場合、あるいは問診が十分にできない場合、付き添いがなく患者さん一人で来院したような場合などは、各種の知的機能検査(知的評価スケール)を行うこともあります。

 また、この種の検査は、痴呆の疑いが高い場合や、すでに痴呆と診断された患者さんの現在の重症度、あるいは経過を調べるために行うこともあります。

 これには、十分程度でできる簡便なものから一時間ぐらいかかる詳しいものまで、さまざまあります。簡単なものでは、「ミニメンタルステイト試験(MMSE)」「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」「N式構神機能検査」などがあります。これらは、正常人のな かから痴呆患者を見出すためのものであり、本人と直接面接して行うものと家族の協力が必要なものがあります。

 また、図形の模写をしてもらうのもよい方法です。先に述べた簡便な知的機能検査でそれほど点数が低くなくても、図形を立体的に描けない場合があるからです。アメリカの多くのアルツハイマー病センターでは、物の名前をどれだけ思い出せるか、新しいことをどれだけ覚えられるか、MMSEのような知的機能試験、それに図形描写の試験と、この四種類を組み合わせたテストが広く用いられるようになってきています(「CREADの神経生理性学的検査バッテリー」)。

 とはいえ、このようなテストをいきなり行うと、患者さんや家族のプライドを傷つけ、信頼関係が損なわれることもあります。その結果、その後の治療に支障をきたす恐れがあります。テストを行う場合は、患者さんや家族の方などがよく納得できるように事前の説明を行い、了解を得てから実施することが肝要です。

 知的機能検査は、早期痴呆かどうかの判断の目安にはもちろんなり得ますが、MMSEなどは軽度のアルツハイマー型痴呆では正常の範囲に収まることから、これらの結果だけから断定することができない場合も多く、総合的な判断が必要になります。

『快老薬品』酒井和夫著より