中核症状への効果が期待される新薬

 

 中核症状を改善し病気の進行を抑える薬剤として、日本ではアリセプトが実用化されたばかりですが、このほかにも今後さまざまな薬剤が実用化されてくることが予測されています。これから出てくる可能性のあるアルツハイマー型痴呆の中核症状に効果が期待される薬剤には次のようなものがあります。

 ①神経伝達機能を改善する薬剤
 アセチルコリン神経系を賦活させる薬剤

  アルツハイマー型痴呆では神経伝達物質が全体的に減少していますが、特にアセチルコリンの減少が目立つのは第1章で述べたとおりです。そこで、アセチルコリンの減少を抑える薬剤がいくつか開発途上にあります。

アセチルコリン以外の神経伝達物質に関係する薬剤

アセチルコリン以外の神経伝達物質、すなわち、グルタミン酸、二コチンなどに関連した薬剤も研究、開発中です。

神経ペプチドを活性化する薬剤

 神経ペプチドは、脳に広く分布し、ホルモンとして働くと同時に神経伝達物質としての役割もあることが知られています。アルツハイマー型痴呆ではこの神経ペプチドも低下していることが報告されています。そこで、神経ペプチドの作用を活性化させる薬剤や、その活性を失わせる酵素を阻害する薬剤などの開発が進行中です。

神経成長因子を活性化あるいは産生促進する薬剤

 神経成長因子は、アセチルコリンをはじめとするコリンが関係する神経系に作用し、神経細胞の脱落や変性を抑える作用があると言われ、アルツハイマー型痴呆に有効かどうかが現在検討されています。ヨーロッパからの報告では、わが国で脳代謝改善薬として使われてきた薬剤が、わが国での使用量の三~四倍量でアルツハイマー型痴呆に有効だったとされています。

根本的な病変に対する薬剤

 アルツハイマーの根本的な病変である老人斑や神経原線維変化の形成を防止する薬剤も、現在、多方面から活発なアプローチがなされ研究中です。特にβアミロイドタンパクの生成や沈着に関する研究が現在さかんに行われています。