ボケに植物療法は有効か

 

 食生活も痴呆の症状に関係があると考えられています。オランダでの研究では、魚を食べる頻度が高い人は脳血管性痴呆のみならずアルツハイマー型痴呆の発症率も低くなるとされています。

 アルツハイマー型痴呆の患者さんの脳に炎症があると考えられていることは前に述べましたが、これは、肉中心の食生活によって、血液が凝固しやすくなったり血栓ができやすくなるたけではなく、脳の神経細胞にも炎症が起こりやすくなるのではないかと考えられています。食生活だけで完全に痴呆を予防できるわけではありませんが、魚中心の食生活はその予防の一助となる可能性があります。

 食生活以外にも役立つことはあります。日常生活のなかで簡単に五感の刺激を高める方法としては、外出することがすすめられます。正常な高齢者は家の中にばかりいても、さまざまな活動をしていればボケることはありませんが、痴呆患者の場合は、家にこもってぽかりいると、隕られた刺激しかなくなり、感覚の鈍化が促進されてしまいます。特別なところに出かけるということではなく、近くを散歩するだけでももちろん有用です。

 同じ意味で、人がいるなかに出たり、人と会話をする機会をもつのもよい刺激となります。各人の趣味に合わせて、人と一緒に絵を描いたり歌を歌ったりすることなども役に立つはずです。また、炊事や庭の草木の世話など、道具を使ったり順序を考えなくてはならないような仕事をすることも、痴呆の進行を抑えるのに役立つと思われます。

 囲碁のような頭を使うゲームも有効で積極的に取り入れたいものです。ただし、これは軽度までの段階で有効なことであり、それ以降はこれらの行動をとることもむずかしくなってくるのが現実です。

 いずれにせよ、これらを行う場合は、その前提として、周囲の人たちが患者さんの心のあり方を理解し、それに洽った対応のしかたをすることが必要です。患者さんは記憶や人間関係など、それまで生きるよりどころとなっていたものを失い、不安を感じています。そのため、普通の人以上に安心感を与える人間関係が必要です。