本来語と外来語の語感の差

 

 ここでケンブリッジ大学で行われた語彙の調査結果をご紹介しておこう。これはネイティブ・スピーカーを対象として、もっとも形式ばった語に5点、もっともくだけた語に1点を与えて評価をしてもらうという調査である。その結果の一部を次に引いておく(①②③はそれぞれサクソン語系、フランス語系、ラテン語系であることを示す)。

 参考までに音節数を加えておいた。③②①の順に形式性が高くて音節が長い。「評点」と音節数に相関関係のあることはおわかりいただけよう。

 ただし、現代英語の語感としては、②と③の相違に目を向けるよりも、①と②③という2つのグループ、つまり本来語と外来語の相違に注意することが重要となる。具体性をもつ中核的な①の語彙とより周辺的で抽象度の高い②③の語彙。この二重性に対する感覚を身につけるようにしたい。

 たとえば、「私は気分が悪い」という場合、ふつうは左の表の①にあげられている111を用いて、I'm ill。という。 indisposedは3音節で形式性が高い語だと、すでに予測されよう。この同義語であるとはいえ、この語を用いると聞き手にどんな印象を与えるだろうか。

 実際、indisposedはいささか尊大な感じを与える語で、話し手と聞き手との間に距離を作りだす。家族とか友人に対しては決して用いられることぱなく、疎遠な間柄の人、あまり好意をいだいていない人に対して用いる語と考えてよい。 ときには敵意の含まれる可能性すらある。卑近な意味に対する外来語の使用は要注意である。

『英語表現を磨く』豊田昌倫著より