医学は若い科学:今までの常識が簡単にひっくり返る世界

健康積極派の多くは伝統的医学が決定的な治療法を与えてくれるとも医師だけが健康に関する情報源だとも思っていません。彼らは健康を創造するプロセスを自分でコントロールします。驚いたことに、かなりの数の医師がその判断を支持しています。著明なエッセイストで腫瘍学者、ニューヨーク市の有名なスローンケタリングがんセンターの所長でもあった、故ルイス・トーマスは医学を『最も若い科学』と呼んでいます。この言葉をタイトルにした優れた著書の中でトーマスは、医師と看護師であった彼の両親が当時、患者に与え得たものは愛情のこもった看護以上のものではなかったと述べています。しかし、抗生物質が発見され、後にDNAの構造が明らかになり、ようやく医学は科学に近づきました。今や医学は他の科学分野同様、ポリオ・ウイルスのような病気の原因やポリオ・ワクチンのような治療法について仮説を立て、それを実験によって検証できます。とはいえ、科学としての医学の歴史はまだ浅いです。

なるほど、現代医学はかつて人類を苦しめ、多くの命を奪った数々の病気に対して絶大な力を持つに至りました。心臓冠動脈のつまりを取り除く治療法は、拷問のような苦しみから人々を救いました。人工股関節はかつて車椅子に頼るしかなかった人々を歩けるようにしました。様々な薬のおかげで、昔なら激しい発作に見舞われた患者も普通に暮らせるようになりました。しかし、医学という科学では、あまりにもわずかな因果関係しか明らかになっていません。ザンタックはかつて世界で最もよく売れた薬ですが、こうした制酸薬は胃潰瘍の治療に最適か? 実は胃潰瘍の大半ヘリコバクターピロリというありふれた菌によっておこることがわかりました。治療法は、おなじみのぺプト・ビズモルと抗生物質です。フリーラジカル(遊離基)の老化作用を抑える抗酸化ビタミンとマーガリンは福音か? さて、どうでしょう。それらは身体に害をもたらす恐れもあるらしいです。胸に注入するシリコンが漏れると膠原病の原因になるというのは本当でしょうか。実際はこの病気とシリコンは無関係かもしれません。今日の常識が明日にはひっくり返るのが医学の世界です。