医師は患者の経済的負担を考慮に入れるべき

医療においては「情報非対称性」が重要なファクターであることがしばしば指摘されます。

医療の現場では多数のスタッフが働いていますが、治療について最終的な意思決定を粉うのは医師です。医師は治療方針を確定するのに際して看護師などの意見に耳を傾けるとしてもそれは参考意見であって最終的な決定権は医師にあります。

医師は医学、医術に関する豊富な知識を有しており、患者に対して優越的な立場にあります。大多数の患者は、医学知識ゼロではありません。しかし、専門的に医学教育を受けたわけでなないので医師との格差は大きく、情報の非対称性を前提とすることは正しいことです。

情報の非対称性により優越的な立場にある医師はどのように行動するでしょうか。考えうる一つの行動は、医師は患者の完全な代理人として行動することです。すなわち、複数の治療方法の中から効果、肉体的・精神的苦痛そして経済的負担などを勘案して患者に最適な方法を選択し、選択した理由を患者に十分説明するとともに患者の合意を得たうえで治療を開始することです。

例えば有効な治療方法として手術と薬剤療法があり、治療効果においては手術が勝り、患者の肉体的、精神底苦痛は薬剤治療が軽く、費用は薬剤療法が低いと仮定します。一般的には最大の治療効果が得られる手術が選択されるでしょう。しかし、高齢などで手術に耐えがたいと判断されれば、治療効果において劣ってはいても薬剤療法が最適な選択であるかもしれません。患者の経済的な負担は、国民皆保険である日本ではほとんど考慮する必要はないかもしれません。しかし、入院差額などの保険外負担があり全く無視しうる要因ではありません。患者の代理人としての医師は、少なくとも3要因を総合的に考慮し意志決定する存在です。