タミフル耐性ウイルスについて:ノイラミニダーゼタンパクのアミノ酸置換

タミフルに関する一つの問題点は、薬剤耐性ウイルスが出現する可能性です。タミフル耐性ウイルスでは、ノイラミニダーゼタンパクの特定部位のアミノ酸が置換しています。そこで、これを指標にして、WHO検査ネットワークにより耐性ウイルスの出現がモニターされていますが、現時点ではタミフル耐性ウイルスが流行しているという所見はありません。しかし、タミフルで治療を受けたベトナムの患者においては、経過中にタミフル耐性ウイルスが出現してきて、いったん快方に向かった臨床症状も再び増悪した症例が報告されています。エジプトの患者からも耐性ウイルスが検出されています。

吸入剤のリレンザについては、耐性ウイルスの出現の可能性はタミフルに比べて低いようですが、現在までの使用例が圧倒的に少ないので、評価は定まっていません。一方、現在のH5N1型インフルエンザウイルスは、ヒトにおいてもウイルス血症を介して全身感染をおこすので、呼吸器の気道表面で作用する吸入剤の効果には限界があると思われます。一方、経口剤でも、腸管が感染を受けた場合には、吸収が悪くなるので、薬剤の血中濃度を高く保つのは難しいと考えられます。そこで、治療用として注射剤の開発が進められていますが、現時点では、期待がもたれる結果は報告されていません。

さらに、タミフルについては、日本での使用量は世界の7割を占め、異常な状況にあります。数年前から青年層において、タミフルとの関連性が疑われるビルからの飛び降りや、道路への飛び出しなどの異常行動が報告され注目されています。しかし、タミフル非使用の通常のインフルエンザ患者においても、このような症例は少なからず発生するので、タミフルとの因果関係は不明です。いずれにしても、抗ウイルス剤に関しては、安易な使用を避ける必要があります。