脳ドックの問題点


一般の人間ドックは、呼吸器、循環器、消化器やそのほかの生活習慣病などのチェックが使命ですから、大きな病院であれば、普通の内科や外科の標準的な設備や検査体制で実施することはさほど困難ではありません。しかも、その検査の基準も、これまでの多くの医学的な知識や経験が全国的に蓄積されています。ですから、脳ドックを実施するとしたら、その病院にある脳神経外科にも同時に協力してもらって、脳についてもチェックすればよいと思われるかもしれません。

しかし、脳ドックは、危険な脳の病態を早期に見つけようという目的ははっきりしているのですが、一般の人間ドックに比べると、いろいろな点でまだ同じレベルではないといえるようです。

じつは、日本では、他の先進国に比べてもMRIなどの優秀な画像機器を備えた病院が各地に多くあるため、人間ドックと似たものを脳でもやってみようということで、安易に脳ドックが始まったと考えることができるかもしれませんン。しかし、脳ドックを始めた脳神経外科医体の気持ちは決して安易な者ではなく、ただ一つ、くも膜下出血を起こす脳動脈瘤を破裂前に見つけることができないだろうか、という気持であったことは間違いありません。

いまやMRIを設置した病院が増え、脳梗塞の危険因子の発見や認知症の早期発見という期待も込めて、脳ドックを行う施設も増加してきています。したがって、最近は脳ドックの使命も脳動脈瘤の早期発見だけではなくなっています。そして、日本脳ドック学会がつくられ、意義深い活動がなされつつあるところなのですが、やはり脳ドックは人間ドックとは少し違うところがあるように思われます。

どこが違うのかというと、まず、脳ドックを行っている病院のレベルが一定でないといわれることです。また、脳ドックとして行われる検査の種類が病院によって違っていることもあります。さらに、それらの病院で行われた脳ドックのせっかくの検査結果が、総合的に検討しきれていないことがあります。近いうちに日本脳ドック学会としては第3回目の総合的な検討がなされると思いますが、これまでのところでは、脳ドックを受けたから何も心配はないとは言い切れないところでしょうか。

また、脳ドックで異常がなかったときはよいのですが、異常が見つかったときの対処方法において、あるいは、それを説明する医師の人格的な能力において、まだ不十分な場合があるのではないかという考えもあるようです。

日本脳ドック学会では脳動脈瘤の早期発見だけでなく、脳梗塞の危険因子の発見や認知症の早期発見にも力を注ぎつつあります。また、血管内手術が行われるようになり、またまた議論すべきことが増えたといえるでしょう。