アジュバント(免疫増強剤)添加ワクチンについて


アジュバント(免疫増強剤)はワクチンの免疫能力を高めるために添加されます。臨床試験で評価されているアジュバントは、日本でも三種混合ワクチンや肝炎ワクチンに使用されている水酸化アルミニウムやリン酸アルミニウムのゲルおよび、深海サメの資質や類似の合成脂質などです。アルミアジュバントは、ウイルス粒子全体を不活化して用いる全粒子のワクチンに添加した場合には、高い効果が認められています。しかし、エーテルなどでウイルス粒子を部分分解したスプリットワクチン(毎年摂取されているインフルエンザワクチンなど)については効果が劣ります。それぞれのアジュバントの免疫増強機序は、いまだ十分にはわかっていません。しかし、血清抗体のみではなく、自然免疫や細胞性免疫を刺激する可能性も示唆されています。

これらの研究から、アジュバント添加H5N1型インフルエンザウイルスは、抗原性が大きく異なる別系統のH5N1ウイルスに由来する新型インフルエンザに対しても、かなりの効果をもつものと評価されています。WHOでは、全粒子ワクチンを抗原とした様々なアジュバント添加ワクチンを、短期的な新型ワクチンのあり方として考えています。

臨床試験ベトナム株(クレード1)試験ワクチンを接種された被験者の血清抗体を調べたところ、クレード2に属する3つのサブクレードのウイルスと強く反応する(抗原体が異なるウイルスに対してもある程度感染性を中和できる)ことがわかりました。マウスやフェレットによる動物実験でも、クレー度1のワクチンを接種された動物は、ほかの系統のH5N1型ウイルスによる致死的な全身感染からは、ほぼ完全に防衛されました。これらのクレード1のワクチンは、免疫原性(抗原が免疫応答を誘起する能力)を増強するためにアジュバントが添加されており、これによって幅広いH5N1ウイルスの防御免疫が誘導されたと考えられます。