原因不明(中脳周囲型)のクモ膜下出血


オランダのファン・ゲインとリンケルの二人が、「クモ膜下出血の診断、原因、および取扱い(おもに治療という意味です)」についての論文を『Brain』という医学雑誌に発表しています。これによると、くも膜下出血の原因として最も多いのは脳動脈瘤の破裂で85%、原因不明のものが10%、残りの5%は動脈解離、脳硬膜の動静脈奇形の破裂によるもの、その他があるとしています。この報告が、最近のものとしては権威のあるものとして認めらえれているようです。

この調査の結果はもちろん正しいのでしょうが、脳硬膜の動静脈奇形ではなく、脳そのものの動静脈奇形とか、もやもや病によるクモ膜下出血もかなりあると考えられています。いずれにしても、これらは統計としては少ないものなのですが、印象が強いためかもしれません。なお、動脈解離によるものが次第に増えつつあるという報告があります。

それよりも重要なことは、脳動脈瘤の破裂以外で原因不明のものが、10%もあるということです。これは、「中脳周囲型のクモ膜下出血」とも呼ばれていますが、とにかく血管撮影でも脳動脈瘤などの異常が全くなく、しかも予後がよいといわれています。

患者の多くは60歳代であり、強いていえば頭部CT像で脳室がやや大きいそうです。再出血の報告もほとんどないので、要するに問題はないのがこの「中脳周囲型のクモ膜下出血」といえるようです。

これを中脳周囲型のクモ膜下出血と呼ぶか、原因不明性とするかは、はっきりしていないのですが、とにかく10%あるというのは事実なのです。

しかし、脳動脈瘤の破裂によるクモ膜下出血がずば抜けて多いことだけは明らかになっています。