シンガポール:翻訳に頼らない国づくり


シンガポール東南アジアでは国民の英語力が最も高い国です。

ここでは英語は4つの公用語のうち、第一公用語の地位を与えられています。

シンガポールの教育相はグローバル・リテラシー(国際対話能力)という概念を用いて、英語習熟の必要性を説いています。

「どの国もこれまで、産業社会に適応し、それをさらに発展させる国民を作り出すのに必要なリテラシーの標準をそれぞれの国単位でつくってきた。しかし、これからは一国単位でのリテラシーが及第点だったとしても、所詮、それはローカル・リテラシーに過ぎず、グローバルには使えない現象が出てくる。翻訳で済ませようというのなら、それもよい。ただ、情報技術革命語には何事も荒まじいスピードで動く。翻訳に手間取っている間に、さまざまな機会を失ってしまう。将来は、翻訳に頼る人権と直接英語で世界にアクセスする人種と、社会は二種類の人種に分かれていく。かつてはコンピューターを使っても、それはコンピューターという機会と対話していたにすぎなかった。ところが、インターネットによって人々は、コンピューターを世界との対話、世界との相互作用の道具として使っている」

マレーシアの教育相も似たような意見を表明しています。

「技術、ビジネス、外交の面で英語をモノにすることは必要不可欠となっている。グローバル経済で生き残りたいのなら、英語に習熟していなければならない」

マレーシアは独立後、英語からマレー語へと公用語を変更し、マレー語を唯一の公用語と制定しました。同時に、英語を第二言語と位置づけ、すべての学校で英語を教えることを定めました。しかし教育相は「現行教育制度の英語教育では不十分だ」と言い、英語教育の一段の強化を国民に呼びかけています。

アジアに、広大にして、躍動的な英語社会が広がりつつあります。

情報技術革命を動力とするグローバリゼーションのうねりの中で、アジアの英語国はおしなべて経済が好調でした。

ニュージーランドのオークランドで開かれたAPEC首脳会議でフィリピンの実業人は、「English speaking Asiaがいまは一番元気だ」と言いました。

「英語アジア」とでも言うべきでしょうか。

アジアには、APECのほか、ASEAN(東南アジア諸国連合)、ARF(アセアン地域フォーラム)など政府ベースの様々な多角的枠組みが生まれてきましたが、「英語アジア」は、そうした上からのアジア地域主義とは別物の概念です。ビジネスが突き動かし、グローバリゼーションが突き動かす、それこそ下からの「開かれた地域主義」の表れと言ってもよいでしょう。