多分化能(リンパ系・骨髄系の双方に分化可能)と自己複製能を合わせもつ造血幹細胞の活性をアッセイする方法のgold standardは、同種細胞への移植後のドナー細胞由来長期造血再構築能を測定することです。代替アッセイとしては、1960年代にTill & McCollochにより脾コロニー形成法(CFU-S)が発見され、造血幹細胞の一元論の確立に大きく貢献しました。以後、メチルセルロース培養を用いたin vitroコロニー形成法、骨髄ストローマ細胞との長期共培養系によるlong term culture i

多分化能(リンパ系・骨髄系の双方に分化可能)と自己複製能を合わせもつ造血幹細胞の活性をアッセイする方法のgold standardは、同種細胞への移植後のドナー細胞由来長期造血再構築能を測定することです。代替アッセイとしては、1960年代にTill & McCollochにより脾コロニー形成法(CFU-S)が発見され、造血幹細胞の一元論の確立に大きく貢献しました。以後、メチルセルロース培養を用いたin vitroコロニー形成法、骨髄ストローマ細胞との長期共培養系によるlong term culture initiating cells (LTC-IC)アッセイ、cobble stone area forming cell (CAFC)アッセイなどが開発され、造血前駆・幹細胞のin vitroでの様々な解析が可能となりました。代替アッセイの中でCFU-blast、HPP-CFU(high proliferative potential colony forming cells)、LTC-IC、CAFCなどがヒトでもより幹細胞に近い活性を反映していることが報告されてきました。しかしながらin vitroの条件下で造血幹細胞を長期にわたり多系統の細胞に分化させながら維持することは不可能でした。

一方ヒトでは、gold standardである同種移植を当然このようなアッセイに利用することはできません。そこで異種動物に移植してin vitroでの造血能をみる方法が代替法として考案されました。ヒト細胞を移植する動物の条件としては、ヒト細胞を拒絶しないことが必要で、免疫能の発達前のヒツジ胎仔、ブタ胎仔、マウス胎仔、そして免疫不全マウスなどが利用されています。この中で小動物である免疫不全マウス(SCIDマウス、NOD/SCIDマウスなど)が最も扱いやすいです。NOD/SCIDマウスを放射線照射後、ヒト細胞を尾静脈より移植し6週以降にマウス骨髄中のヒト細胞生着を検出するNOD/SCID mouse-repopulating cell (SRC)アッセイは現在世界中で最も汎用されている造血幹細胞の評価モデルです。

それぞれのアッセイで測定している細胞群は異なっており、どのアッセイを用いて対外増幅の効率を測定したかにより評価が異なってきます。現在最も未熟な造血細胞を測定していると考えられるのはSRCアッセイですが、ヒトに移植されたSRC数と生着が相関するというデータは今のところまだ得られていません。また免疫不全マウスを利用する場合、長期造血といっても6ヵ月までしか観察できない点に批判があり、数年にわたる造血を観察するためにはヒツジ、ブタなどの大型動物が必要になると思われます。しかしながら、多くの個体を用いた希釈法による定量アッセイができるという点で免疫不全マウスは大型動物を利用した系より優れています。したがって現状では、全臨床研究で定量的SRCアッセによって有効性が認められた造血幹細胞対外増幅法であれば、臨床応用へ移行することは妥当と考えられます。