米国医療システムの縮小路線と体質改善路線

ダウンサイジング(縮小路線)は「とにかくノーという」ことによって減量を図る過酷なダイエットです。人なら食べ過ぎに「ノー」、企業なら人員などの資源について必要以上の数と支払いに「ノー」、医療システムの場合なら資源の乱用やそれに対する過剰な支払いに「ノー」というわけです。

80年代に多くの企業が採用したのが、この減量法でした。人員削減、賃金カット、その他の経費削減によって企業は身軽になりました。マネジドケア組織はこの減量法の医療版です。マネジドケアは無駄なカロリー摂取に「ノー」ということにより経費削減を約束します。マネジドケアが追放宣言したジャンク・フードは、不必要な高コスト専門医への受診、医学技術の慎重さを欠く使用、長すぎる入院、医師、病院などの医療機関への法外な支払いです。多くの人々がこうした約束を信じたようです。


脂肪を筋肉質に置き換えるというダイエットは、見た目にはわかりにくいです。筋肉細胞は脂肪細胞より燃料カロリーが大きいので、このダイエットはより効率の高い身体をつくります。摂取した食物からより多くの産出高を得る身体をつくるのです。「とにかくノーという」ダイエットは全身をスリムにしますが、「脂肪を筋肉質に」というダイエットは、体質そのものを改善し、より能率的にカロリーを燃焼する人間をつくるわけです。

リサイジング(体質改善路線)に挑む企業は、不要な機能を的確に摘み取り、残った部分の筋肉を増強する戦略を取ります。多くの場合に共通するのが二つの重要な方策です。第一に、核となる得意分野を絞り込み、これまで社内で生産していたモノやサービスをどんどん外注(アウトソーシング)します。第二に、技術革新と統一的オペレーション・システムに重点的に投資し、ただがむしゃらに働くのではなく、もっと賢く働くことを考えます。生産性向上における組織改革の重要性は見落とされがちですが、『ビジネス・ウィーク』誌が述べている通り、「真の飛躍は、(中略)経営と組織構造に起こりつつある大変化である。それは仕事の仕方を根底から変えようとしている。(中略)しばしばこれは、マーケティング、エンジニアリング、製造、金融など、旧来の機能単位の分断組織を解体し、従業員の配置も、優れた商品とサービスを顧客に届けることを目指した総合的チーム編成にするということだ」