在住外国人コミュニティの確立条件


在住外国人にとってコミュニティで大切なのは、日本人と共生する住民としての生活です。在住外国人を含む住民がコミュニティの主役なのです。彼らが生活する上で重要なサービスが民間レベルでも公共レベルでも提供されていかねばなりません。その際、企業など民間レベルでは採算ベースに合わないサービスは淘汰されるので、生活を維持していくのに必要な様々な施設やサービスは公共的な形態において提供されていかなければなりません。それには地方自治体が公共政策を通じて住民生活の補完や整備をすることが必要となります。この関係は現代のコミュニティでは大変重要な問題です。

住民にとって「地方自治体」は、本来、住民の自治の機構ですが、同時に、国の地方行政機関でもあります。このような二面性を備えた地方自治体を住民自治の場として確立することが大切なのです。知れは彼らの生活水準を維持、向上させてゆく保障としても重要なのです。コミュニティとは、現実に存在する地域としてよりもむしろ理念的な概念でした。コミュニティが住民の自立性、主体性に根差した共同活動としてとらえられる限り、このような住民の自治としての側面がクローズアップされることになります。

そうすると住民に必要な翻訳サービスも従来の国民国家型の言語政策と同じ発想を採る必要はないことになります。国民国家型の言語政策は政府による上からの一方的政策でした。それは、政策の決定の仕方を見れば一目瞭然です。たとえば、これまで世界各国で採られた言語政策を眺めると、政策決定に際し、さまざまな不純要素を考慮せざるを得ないのがわかります。そこには言語学者や、翻訳者の純粋な提言が受け入れられることなど皆無に近いのです。すなわち言語政策の立案に当たっては、政治家や経済人といった社会的強者の思惑のほうが、純粋で理論的な提言より重視されるのです。

世界の言語政策史を眺めれば、各国の言語政策では、有産階級の既得権、権力構造の保持、政治的優位の確保、富の分配、などを配慮して決定がなされているのがわかります。これに対し、コミュニティで採られるべき言語政策としての言語サービスはこのような不純要素を考慮する必要はありません。住民の住民による住民のためのサービス、すなわち、住民自治の原理が働くのです。唯一、関係するのは自治体の予算です。限られた予算を最大限、住民の意向に沿った方策の実現が求められるのです。在住外国人にとっても生活に必要な翻訳サービスが提供されなければなりません。