造血前駆体外増幅の臨床応用:CFU-C、CFU-GM


造血前駆細胞対外増幅の臨床Ⅰ/Ⅱ相試験の検討が報告されました。Bruggerらは10例の固形癌で大量化学療法を行う患者を対象に、自己末梢血CD34+細胞を自己血清、SCF、IL-1β、IL-3、IL-6、EPO(エリスロポエチン)存在下に12日間培養後総細胞数として62倍、CFU-Cとして50倍の増幅を認めました。患者に移入したところ、未処置の自己末梢血管細胞移植を受けたhistoricalコントロールと比較して同様の造血再構築能を確認し、毒性は認めませんでした。

またAlcornらは10例の造血器腫瘍の患者を対象にやはり自己末梢血CD34+細胞を同様のサイトカインの組み合わせで8日間培養後、総細胞数として21倍、CFU-GMとして139倍の増幅を認めました。患者に輸注したところ好中球の回復、血小板の回復とも未処置の自己末梢血幹細胞移植を受けたhistoricalコントロールと比較して差がみられませんでした。これらの報告はいずれもサイトカインで増幅した細胞を体内に戻すことの安全性の確認が主要な結論ですが、効果を期待するにはさらなる工夫が必要とされます。

どのような有用な医療技術も世の中に普及する前にその安全性、有効性、経済性、倫理性に関しての十分な検討(medical technology assessment:MTA)が必要です。対外増幅された造血幹細胞のような細胞プロダクトも例外ではありませんが、細胞治療はいまだ開発途上の領域であるので、現状では十分なMTAのシステムは構築されておらず、今後の重要な課題です。

医薬品の臨床試験では3段階のアセスメントがなされ、第Ⅰ相では安全性、第Ⅱ相では少数の患者による有効性と用法・用量を中心とした安全性、第Ⅲ相では多施設における多数例を対象に比較試験が行われます。したがって増幅造血細胞の評価においては、第Ⅰ相では有害事象、第Ⅱ相では生着と有害事象がエンドポイントとなり、第Ⅲ相では増幅していない造血細胞移植との成績の比較がなされることとなります。ここでの安全性は体外増幅に使用されたサイトカインや増幅細胞投与の人体への影響に加えて体外操作の各プロセスでの品質管理を含むものです。