体質別健康法:皮膚呼吸と排泄力の改善で癌を治す


「十人の患者さんがいたら、十人の患者さんすべてに満足してもらいたい」

 長谷部南宗先生は、開口一番こういいました。これが、長谷部先生の治療哲学でもあります。

 長谷部先生は、いわゆる医者ではありませんが、奥さんをガンで亡くしてからというもの、ガンを治す方法はないものか、そのことばかり考えてきたというのです。

 先生にとって、ガンに対する効果的な治療法を創造することは、奥さんへの弔い合戦でもありました。

 二十六年間、さまざまな分野の自然医学を研究し、多くの患者にも接してきたそうです。そして、体質を無視した画一的な病気治療が、ときに弊害を及ぼす例をたくさんみてきたというのです。

 そんな経験から「十人の患者さんすべてに満足してもらう」という治療哲学ぱ生まれたのです。一人一人の体質を踏まえながら治療にあたる療法。それが、体質別健康法といってもいいかもしれません。

 体質別健康法は、ベースに皮膚呼吸の促進と腸の改善という二つのテーマがあります。それについて、髪を短く刈り込み、修行僧にも似た風貌の長谷部先生は、ホワイトボードを使って説明しはじめました。

 「食物を食べると、それが細胞にもエネルギーにもなりますね。そして、そこには当然ながら残物が生じます。

 残物は外に取り出さなければならないのですが、酸素が不足するとそれが排除されません。なぜなら、汗や尿として排除される残物は水、つまりH20で、そのうちOである酸素が不足すれば、Hである水素は残留してしまうでしょう。

 そして、この残留物が老化を起こさせるわけで、ガンなどの原因にもなるんです」

 つまり、酸素をより多く取り入れることが、ガンを治す一つの方法となるというのです。そこで、長谷部先生は、皮膚呼吸の大切さを強調しました。

 「現在医学でぱ、人間が皮膚で呼吸しているということを全然考慮に入れずに治療している。それじゃダメですね。

 私は、たとえばビワ葉温圧療法などの物理的な力を借りて皮膚呼吸を活発にさせています。ただし、ここで大切なのは、ここで体質を考えるということ。ビワ葉温圧がいいからといって、だれにでもきくわけではない。

 なかには、ショウガ温熱療法のほうがいい人もいるんです。それが、体質別ということです」

 皮膚呼吸と並んで、長谷部先生が重視するのが腸の機能です。食物が腸のなかで長く滞りすぎたり、便の出方がたりなくて宿便となったりすることが、ガン治療においては要注意事項だと話します。

 「腸内に食物が長く残ると、そこで発酵が起こります。すなわち腐敗するということです。そうなると、血液のなかに、腐敗した毒素も一緒に吸収されるということになってくる。そして、吸収された毒素がガンの原因にもなってくるのです。

 だから、腸内での腐敗をやめさせて、毒素の吸収をさせなくすれば、ガンも自然によくなってくるわけです」

 腸内で毒素を発生させる原因は便秘にあります。ですから、まず便秘を治すことから治療は始まるのです。ここで問題になってくるのは、先ほどからも何度もいっているように、体質の違いです。そのあたりの注意点を長谷部先生はこう語っています。

 「便秘には、熱性の便秘と寒性の便秘があると思うのです。寒性の便秘は、からだが冷えているが故に血液の流れが悪くなり、腸のぜんどう運動が不活発になって起こる便秘です。これは白血病に多いです。

 こういう便秘に下剤やクロレラ、プルーンを飲ませるとますます悪化する。それは、下剤やクロレラ、プルーンが、からだを冷やす働きをするため、便秘の原因をますます強めるからです。

 だから、寒性の便秘に対しては、からだを暖めるものを摂取させる。そうすることによって、血行がよくなり、ぜんどう運動も活発になって、便秘も解消されるのです」

 まさに体質の違いを考えなければ、いい薬も逆に作用してしまうということです。熱性の便秘なら、下剤もクロレラもプルーンも有効だというのです。

 体質別という言葉が何度も出てきましたが、長谷部先生は、人間の体質を大きく三つに分けています。陽滞性体質・中滞性体質・陰滞性体質の三つですが、それぞれの特質と簡単な判別法を、ここで紹介しておきましょう。

一、陽滞性体質

 栄養素が体内で酸化して筋肉を硬化させ、血液の流れを防げる。悪性病の代表的な体質であり、肌の色が浅黒くて、タフで頑強そうな人に多い。皮膚は乾いているか、ざらざらしていてかゆみがある。

 長時間入浴しても疲れるということはなく、睡眠時間が少なくても元気でいられるが、肩こりなどがひどくて、大便が非常に臭い。

二、中滞性体質

 でんぷん質や過剰な糖分などが、体内で転換され、厚い中性脂肪を形成して皮膚呼吸を悪くさせる体質。肥満体で肌の白い人に多く、腹部の色は白いが顔は赤い。

 入浴が長いと疲れるタイプで、少しの運動で動悸がする。足の関節に水がたまりやすく、冬など足を冷やすと肩がこる。

三、陰滞性体質

 一般に虚弱体質といわれる体質で、とにかく体力がなく、すぐに衰弱する。からだに熱がたまらないために冷えている。

 めまいや立ちくらみが多く、かぜをひいてもあまり高い熱が出ずに長引く。少量の運動で発汗するのがこのタイプ。また、生野菜があまり好きではなく、すっぱいものもきらう。もちろん、以上は一つのめやすであって、自分がどの体質であるのかは、もっと慎重に調べないと判断ぱ下せないというのです。

 患者の体質を判定した後、具体的な治療に入ります。治療は、食事療法と健康食品、ビワ葉温圧などの代替療法が柱になっています。

 食事療法は、動物性たんぱく質と砂糖類の摂取をきびしくひかえさせ、菜食などが基本になります。そのうえで、体質別のメニューが加わるのです。

 ガン患者に最も多いという陽滞性体質の人には、食事は胃腸に無理がなく、腸内の腐敗、発熱、便通にも効果があるメニューを考えなければなりません。野菜、海草、いも類、果物がその中心になります。

一、野菜のおひたし

  大根の葉、小松菜、ホウレンソウなどの葉緑素が多い野菜がいいが、ただし、ニンジン、ネギ、春菊は多く使わないほうがいい。

二、野菜の水炊き

 野菜料理のなかでも水炊きほど効果的なものはない。その利点は、湯につける時間が短ければ葉緑素やビタミンが壊れにくいのと、食べやすいので量も多くとれるということ。少々食べすぎても、野菜は胃腸に負担にならないから安全である。それに手間もかからない。

 糸コンニャク、シイタケ、白菜、エノキ、うどん、はるさめ、その他野菜を入れて二杯酢で食べる。


三、野菜サラダ

  野菜、果物、ジャガイモなどを主体とする。ジャガイモは、胃炎や腸炎の心配がないので非常にいい。

四、納豆

  おいしく食べられ、からだのためにもいい。

五、コーンスープ

  胃腸に負担がなく、内部熱を高めず、からだに無理がかからない。また、食事療法の補助として、健康食品も体質にあわせた利用を勧めています。

・植物酵素(天然酵素

 植物酵素には、胃や十二指腸の潰瘍の痛みのもとである内部熱をさます。

・乳酸カルシウム

  内部熱を中和させる働きがある。

クロレラ

  葉緑素たんぱく質を多くふくみ、内部熱を調節する効果がある。太り気味の人に合いやすい。

・ビワ茶

  内部熱を下げる効果が高い。胃腸内の熱も取り除き、血液中の脂肪や塩分、尿酸、その他の老廃物、過酸化脂質などを分解、排泄させて細胞を浄化する。

 特に陽滞性体質の人に効果をもたらすというビワ葉温圧治療をじっくりと見学しました。

 まず、患者は用意された衣服に着替え、濡れてもいいようにビュールの敷かれたベッドの上に横たわります。そして、その上からビワ葉エキスを全身にぐっしよりと浴びるのです。

 次に、ヒーターマットでからだの上下をサンドイッチされ、さらにビニールで熱が逃げないようくるまれて密封されます。、このとき、内部温度は七〇度以上になるそうです。

 その状態で、二十分から一時間我慢するのです。

 「特に、肉食に偏った陽滞性体質の人だったら、食事療法とこの温熱療法で非常によくなるんです。ほんと、肝臓ガンなどはコロコロ治る」

 コロコロ治るとは参りますが、残念ながら治った証拠のデータというものがほとんどありません。

 「そこを問われると非常に弱いんです。でも、関西に体質別健康法を取り入れている治療所が十五軒ほどあるので、きちんとデータを取っていきたい」

 その通りです。データがないと、どんな療法もうさん臭いものとしかみられないでしょう。

 エイズについても「治せる目算が立っている」という長谷部先生。データが充実する日を楽しみにしたいものです。

 費用=初回が一万五千円、二回目以降からは症状によって異なります。