がん患者の食事改善十原則


 幕内先生は、ガン患者の食生活指導を始めて約二十年になりますが、十年前にくらべて患者の食生活に対する関心は、非常に高くなっているといいます。「ただし、いまの医療制度のなかでぱ、食生活の指導はなかなかしてもらえません。糖尿病のような病気以外は、ほとんど食事について触れることがないのが現状です。そのために、多くの患者さんはテレビ、雑誌、書籍などで情報を入手することになります。ところが、それらから流される情報のほとんどが『食生活』の情報ではなく、『食べ物』の話なのです。かつて、ワラビや魚の焼きこげを食べるとガンになるというのがありました。また、ニンジンや緑茶を食するとガンにならないとか、最近ではバナナ、ココア…といった冗談のような話が飛びかっています。そのため患者さんも右往左往しています。

 ガンという病気を『食生活』だけで語ろうとすること自体に問題があるのです。ましてやひとつの『食べ物』で語ろうとすることなどナンセンス以外の何物でもありません」

 一方で、ちまたにあふれる食事療法は、ほとんどの場合、実践するとなるとなかなか難しいものです。極端にいえば、一〇〇人中、三人が実行できればいいといったものがほとんどのようです。

 幕内先生は「食事療法は薬と違って一定期間実行すればいいというものではありません。長期間実行するものです。そのためには、その患者さんの家族や社会のなかで無理なく実行できるものでなくてはなりません。私たちのところには料理もつくったことのない単身赴任の男性も相談にみえます。そのような場合は、外食の仕方をアドバイスすることもあります」といいます。そうでないと、食生活がよくなっても家族関係が悪くなったり、社会にゆがみが生じることにもなりかねません。幕内先生は、それでは何の意味もなくなってしまうといいます。」

 ガンの患者は年々増えつづけ、そのうえ低年齢化しています。現代の食生活にさまざまな問題があることは明白といえるかもしれません。

 幕内先生は現代の食生活について、人間のからだを石炭ストーブにたとえて、次の五つの問題点があるといいます。

一、燃料の入れすぎ

 食べすぎで、からだが不完全燃焼を起こしている。

二、燃料のまちがい

 パン、牛乳、乳製品、肉、食肉加工品、油脂類など、あ・まりに欧米化しすぎている。

三、空気(酸素)不足

 ビタミン、ミネラルといった空気が不足している。

四、煙突がつまっている

 食物繊維の不足で、便秘がちになっている。

五、不純物を入れている

 化学物質(農薬、食品添加物)で不完全燃焼。

 

幕内先生は具体的な食生活の改霊息東として、次の十項目を提案されています。

 ①ご飯をきちんと食、べる

 ご飯は食生活の土台です。きちんと食べることが大切です。きちんと食べないと、甘い菓子類や飲料水が欲しくなります。また、ご飯を主食にすれば、副食も季節の野菜や魚介類などよい内容になります。パンの常食は避けてください

 ②破体で満腹にしない

 《赤ちゃんは歯がないからオッパイ(液体)で満腹にするしかおりません。しかし、歯がはえたら食べ物はきちんとかんで食、べることが大切です。かむ必要のない液体で満腹にすると、食事が入らなくなります。飲み物は、水、番茶、ほうじ茶。麦茶、薬草茶、緑茶など満腹にならないものにしましょう》

 ③未精製のご飯を食べる

 くご飯は、胚芽米、分づき米(三分、五分、七分)、玄米など未精製の米を常食しましょう。また、米に雑穀や麦類を入れるのもいいでしょう》

 添副食は季節の野菜を中心にする

 《副食は季節の野菜、海草、イモ類を中心にします。動物性食品よりも多く食べるようにしましょう。春は、セリ、ウド、フキ、ワラビ、タケノコなどアクの強い野菜。夏は、ウリ、キュウリ、トマト、レタスなど生野菜中心。秋は、栗、イモ、米、麦、キノコなど。冬は、レンコン、ニンジン、里イモ、ゴボウ、大根など根菜を中心にしましょう。冬でも生野菜のサラダというのは好ましくありません》

 ⑤醗酵食品をきちんと食べる

 くみそ汁、漬物、納豆などの醗酵食品を常食するようにしましょう。できれば、きちんと醗酵した質のよいものを食べたいものです》

 ⑥動物性食品は魚介類を中心にする

 《魚介類の選び方は、色で選ぶのではなくて、値段で選ぶのが賢明です。一般に高価な魚ほど、薬づけの可能性が高くなります。その他、動物性食品は卵程度にしましょう》

 ⑦白砂糖の入った食品は食べない

 《白砂糖、異性化糖ぶどう糖・果糖・液糖)の入った菓子類、飲料水は極力食べないように》

 ⑧揚げ物はひかえめにする


 ⑨できる限り安全な食品を選ぶ

《神経質にならない程度に。せめて、調味料くらいぱよいものを使いたいものです》

 ⑩食事はゆっくりとよくかんで

 《口のなかに食べ物が入っているときぱ飲み物はひかえましよう。かむことは、食べ物を細かくするだけでなく、歯ぐきをじょうぶにしたり、脳の血流をよくしたり、非常に大切な働きをしています》

 以上の十項目です。優先すべき順番に並んでいます。食の安全性には注意していても、ご飯をあまり食べない生活をしているようなら考え直す必要があるわけです。

 この十項目は、ガンであれアトピーであれ、あらゆる病気に共通するものであり、同時に健康な人もこういった食生活をした方がいいという指針です。