小児結核:粟粒結核や結核性髄膜炎


 抗酸菌であるヒト型結核菌による感染症で、空気感染する。

 成人型結核は、初感染型から既感染後数年以上経って再活動化して発生するものまであるが、小児の結核は初感染型であり、感染から数ヶ月で発症する。家族内感染がほとんどであり、まず肺実質に感染巣をつくり、その免疫能の低さのため結核菌は肺門リンパ節へ侵入し、初期変化群肺結核を形成する。さらに適切な治療がなされなければ、血行性に播種して粟粒結核結核性髄膜炎を発病する。

 小児結核は近年激減した疾患である。化学療法の進歩により感染源の成人型結核が急速に減少したこと、家族検診の徹底で予防できることなどによる。しかし、欧米に比べると日本の結核羅患率は高止まりしており、先進諸国の中では対策が遅れているといわざるを得ない。また、若い小児科医に結核の診療経験がない者も増えており、結核に対する認識が低下しているのも問題である。

 また、結核においても多剤耐性菌が問題になっており、結核は決して過去の病気ではない。上述の小児結核の特性を充分把握することが重要である。


1……診断

 身近な開放性結核の患者との接触歴、 BCG接種歴、ツベルクリン反応(ツ反)の結果により判断する。 BCG接種は結核予防のための免疫能を付与するために開発されたが、確実な有効性までは期待できない。ツ反検査は結核に対する免疫能を反映すると一般に考えてよいが、その解釈は慎重でなければならない。例えば、正常乳幼児では5~10 mmの発赤径を示す群の比率は高く、 10 mm以上の発赤径の反応を示すものの中にも偽りの陽性がかなり含まれる。また、結核に感染してもツ反陰性である場合には、①感染直後(感染後、3~10週間でツ反は陽性となる)、②重症結核あるいは結核性胸膜炎初期、③極度の低栄養状態、④免疫機能障害児あるいは免疫抑制剤使用時、⑤麻疹やマイコプラズマなどの感染時・後などがある(文献2>)。

 したがって、家族歴のある乳幼児では、ツ反のいかんによらず積極的にINH(イソニアジド)10 mg/kg/日で予防を開始する。開放性結核患者との接触歴のある学童ではBCG接種歴とツ反結果により予防内服を考える。

 接触歴がない場合はツ反とBCG接種歴を中心に判断することになるが、慎重に経過をみていくことが最も重要である。

 INHの予防内服をする前に、胃液や喀痰で結核菌検査(塗抹、培養、 PCRなど)を行う必要がある。また、血沈、胸部X線写真、肝機能検査を行い、総合的に判断する。

2……治療

 発病した小児結核は、①初期変化群肺結核、②成人型慢性肺結核、③結核性胸膜炎、④結核注髄膜炎、⑤粟粒結核の順に多い。

 ①~③ではINH(イソニアジド) 15mg/kg/日、 RFP (リファンピシン)15mg/kg/日の2剤内服で1年間治療する。②で空洞が広範な例にはEB(エクンブトール)20mg/kg/日内服を6ヶ月併用する。④⑤ではINH15mg/kg/日、 RFP15mg/kg/日内服で年3ヶ月治療する。④ではSM(ストレプトマイシン) 25mg/kg/日筋注を併用する。耐性菌例や重症例では、PZA(ピラジナミド) 20mg/kg/日内服をRFPのかわりに用いることもある。

 INFRFPは肝機能障害を起こすことかおり、GPT>200IUで休薬を要する。SMの聴力障害、EBの視野狭窄、 PZAの高尿酸血症などにも注意が必要である。

 ①~③では重症例を除き強い活動制限は不要である。集団生活を送る小児の初期結核の菌陽性者でも、治療開始後1ヶ月ほどで菌陰性となれば、集団生活に戻してよい。②③の重症例や④⑤では入院の対象となるが、臨床症状と排菌の可能性を評価して、可能な限り短期間とする。

 

看護スタッフの対応について

結核は空気感染するので、病室が陰圧に空調される部屋が必要である。厳重な院内感染防止対策がたてられなければならない。医療従事者の健康管理も大切である。開放性結核の場合、患者の状態を受け入れる医療機関の体制が許すならば、専用医療施設で治療を行うべきである。小児科医のみならず、看護スタッフの間でも結核に対する関心がうすれてきている。ツ反、 BCGの意味と限界について正確な知識をもっていることは最低限必要である。

O入院治療の対象となる児は前述のように重症例が多く、一般症状が悪化していることも多い。さまざまな支持療法・対症療法が必要になることがある。
結核の治療では、感染源を明らかにして対策をたてること、早期に診断して適切な治療を行うことがもっとも大切である。正確な問診と指導を担当医と協力して行うこと。

○治療にあたっては、患者のみならず家族の生活設計、ライフスタイルにも変更・改善を要するケースが多い。ケースワーカーらと協力して、生活の支援を続けるとともに、地域の保健婦とも連携していく必要がある。