自閉症児の看護ポイント


O障害の意味と、自閉症の特性と文化、構造化、ノーマライゼーションなどの充分な理解をしていることが第一条件である。

O[自閉症は親のかかわり方が問題]という意識をもつ親や医療関係者が少なくない。両親のかかわり方だけの問題ではなく、発達障害であることを、家族にもよく説明して、両親が不要な自責の念を持たないよう、また、子供の障害を正しく受け止めて、適切な療育訓練を受けられるよう指導していくことが大切である。親を共同治療者として徹底的に指導してゆく。

Oそれぞれの子供の能力にあったQOL (Quality of life)を高めるように努力する。

Oコミュニケーションスキルの学習をし、日常生活で子供の意思伝達能力を改善することが必要である。

自閉症の患児には、一つのことに固執する(シングルフォーカス:single focus)という特徴がある。このために関心が次々に移っていく転動性や多動性が出現する。そのため、人の気持ち、常識、ルールなどの目にみえないものの理解や想像・イメージに乏しく、また、見て書くとか、理解しながらノートをとるなど、同時にいくつものことを視野において作業することができない。

 しかし、見たものを見たままに暗記する(ジグソーパズル、トランプの神経衰弱、カレンダーボーイなど)視認知と記憶は優れていて、パターンのしっかりしたものや例外なく見通しがつくことには強いという特徴がある。したがって、聴知覚と意味(イメージ)を目に見えるものに置き換えたり、規則・法則性をはっきりさせると認知が可能である。すなわち、構造化のアイデアにより、自分でできる世界を広げ、自立してできるように支援していくことが大切である。時間が変われば場面も変わるということも理解できないので、一つの場所を多目的に使ったりしないで、絵カードや写真カードを使用してコミュニケーションをつくっていく。

 予期しないことが起こると混乱して困ってしまうので、スケジュールの構造化も行うと入院療養生活がスムーズに行える。

○好きなものは好きなだけ食べるという偏食があったり、歯軋りなど、われわれのいやな音(電話のベル、騒音など)を不快に思うことが少ない。冷たさ・寒さには鈍感で、痛覚刺激にも鈍であるが、くすぐったさには敏感で肌に触られることを嫌うなど、触覚と味覚・聴覚などの感覚がわれわれと異なることを充分に理解する。

 問題行動は氷山の一角にすぎず、その下の部分に潜んでいるものを改めない限り、根本的な問題行動の改善は望めない。また、他の項目の疾患のように診断が決まっても治療法があ
る程度決まることは少ない。治療法は、主治医やパラメディカルのスタッフの得手不得手により選択されるからである。