亜急性皮膚型および深在性エリテマトーデス:結節性皮膚ループスムチン症

 亜急性皮膚型エリテマトーデスsubacute cutaneous lupus erythemato-sus〔Sontheimerl979〕〔SCLE〕

 〔症状〕日光裸露部[顔・頚・上肢伸側・上背・肩]に対側性に多発性に生じ、再発性であるが瘢痕は残さない。落屑性紅色丘疹として始まり、拡大して乾癬様の丘疹鱗屑型papulosquamous type となるものと、中央部の退色する環状紅斑

 〔ときに鱗屑・小水疱を伴う〕となるannular一polycyclic type〔旧自己免疫性環状紅斑autoimmune annular erythema Rekan囗973はこれに包括される〕とに分けられる。微熱・関節痛などはみられるが腎症・中枢神経症状など重篤なものはない。日光過敏症・血管炎・ DLE樣皮疹・脱毛・爪囲紅斑など。

 [検査]抗SS-A抗体陽性、その他抗SS-B抗体、 HLA-DR3高率。一方各種抗核抗体陽性率は低い。

 〔組織所見〕表皮萎縮・液状変性・血管周囲性細胞浸潤。LBTはときに陽性。

 〔鑑別診断〕とくにsubclinical SjS にみられる環状紅斑〔SJS〕の検査を必ず行うこと。                               、。

 〔治療〕ステロイド外用のみに反応することが多い。その他遮光・ステロイド内服。

 深在性エリテマトーデス profundus〔Kaposi 1869~Irgang 1940〕

 :皮下硬結が主体で被覆表皮は正常または紅斑・萎縮・潰瘍化などDLEないしSLE の皮疹を示す。前額・頬・殿・上腕に好発、皮膚陥凹を以て治る。組織学的に表皮にLE変化は有るときとないときあり、リンパ球・形質細胞・組織球から成る脂肪織炎[lupus septal panniculitis]・脂肪壊死・脂肪肉芽腫・DLE〔ときにSLE〕に合併。予後は一般に良好であるが、醜形[皮膚陥凹]を残すことが多い。ステロイド内服または局注。

 無疹型lupus sine lupo : 全身症状のみで、皮疹を欠くSLEの1型。

 新生児エリテマトーデスneonatal LE 〔McCuistion-Schoch 1954〕:母の自己抗体〔IgG : とくに抗SS-A、 SS-B抗体〕が経胎盤的に児に入り発症、皮疹を生ずる型と先天性完全房室ブロックを生ずる型とがある。女児にやや多く生下時から1ヵ月で環状紅斑あるいは円盤型紅斑を主として顔面・体幹ときに全身性に生じ、ほぼ6ヵ月で消退する〔抗SS-A抗体も6ヵ月で消失〕。その他肝脾腫・貧血一発熱・白血球減少・血小板減少などを伴う。予後はよいが、まれにのちにSLEを生ずる。母の疾患は殆どがSLE、またはSjS、ときにSCLE、リウマチ熱、 DLEであるが一見正常の場合も少なくなく、これらから「抗SS-A抗体症候群」、「新生児S」ogren症候群」と呼ぶことも多くなった。

 Urticarial vasculitis : ①中年女子、②再発吐持続性じんま疹様発疹〔24時間以上持続し、いたがゆい・丘疹紅斑ないし血管浮腫状、また紫斑状のことあり・色素沈着をしばしば残す〕、③leukocytoclastic vasculitis〔真皮細小静脈への好中球浸潤・核破片・血管壁フィブリノイド変性・内皮細胞腫脹・出血等〕、④低補体値[とくにClq]、⑤腎・表皮真皮接合部・乳頭部血管へのlgと補体の沈着、⑥関節炎と関節痛・腹痛・発熱・リンパ節腫脹。⑦血沈亢進、⑧流血中の免疫複合体、⑨まれに軽度の糸球体腎炎、⑩ANF陰性(または低値陽性)、⑩抗ヒ剤無効、ステロイド免疫抑制剤DDS有効。⑩SLEに似るもその診断基準を満さず[抗DNA抗体・LE現象陰性、腎病変軽度]、基礎疾患としてSLEのほかにクリオグロブリン血症〔とくにIgG-IgM混合型〕・HBVによる血管炎などがある。

 結節性皮膚ループスムチン症nodular cutaneous lupus mucinosis〔Nagashima 1985〕:SLE〔ときにDLE〕患者に多発する常色~淡紅色の結節で上腕・前胸・背に好発、真皮上層にムチン沈着をみる。①ICが線維芽細胞を剌激してムチン産生を高めたとするほか、②乳頭下層の血管透過性亢進、③血清中ヒアルロニダーゼインヒビター活性、④leukocytoclastic vasculitis の関与などが考えられる。                         ・。

 SLEの剖検所見:その主なものを記すと、

 1)心:弁膜の現状増殖〔Libman-Sacks症候群〕。心筋変性。

 2)腎:白金耳状病変〔wire-loop lesion〕、尿細管変性。

 3)血管系:小動脈以下の動脈毛細管、静脈中膜のフィブリノイド変性〔いわゆるGeisenのcapillaritis generalisata maligna (悪性汎発性毛細管炎)の像]、電顕的に細管構造(microtubular structure : MTS)。

 4)脾:中心動脈の線維増殖(onion skin fibrosis)。

 5)肺:非特異的気管支肺炎、間質のフィプリノイド変性。

 6)関節:滑液膜のフィブリノイド変性。

 7)内分泌系:全体に萎縮像、特に副腎に著明。

 8)その他:各臓器、漿膜における著明なフィブリノイド変性。