皮膚筋炎の症状：内臓悪性腫瘍の合併、免疫抑制剤〔メソトレキセート・アザチオプリン・ミクロフォスファミド・シクロスポリン〕

皮膚筋炎dermatomyositis 〔Unverricht 1891〕

　〔症状〕

　１）前駆症状：全身倦怠感・頭痛・関節痛・軽度発熱。

　2）皮膚症状：顔面・四肢〔とくに肘頭・膝蓋〕・体幹に、対側性に浮腫性紅斑を生じ、次いで落屑性乾燥性浸潤性紅斑［淡紅色～暗紅色］となる。眼瞼中心のヘリオトロープ様紫紅色腫脹が特徴的。指関節背面に扁平隆起性舗石状の紫藍色丘疹(Gottron's sｉｇｎ）。爪小皮爪囲、爪床に毛細血管拡張(periungualteleangiectasia)。のち色素沈着および脱失・萎縮・落屑・毛細血管拡張症などを示す〔多彩皮膚筋炎(poikilodermatomyositis)〕。頭髪は疎となる。光線過敏症［日光照射による発症。増悪］のみられることあり。ときに石灰沈着。

　3）筋症状：筋腫脹・硬化のため、筋無力感・自発痛・圧痛・握痛を生ずる。近位筋とくに肩・上肢が侵されやすく、手が上げにくく、首のささえが悪く、寝返り不能、立ち上りおよび歩行困難を生ずる。遠位筋障害として握力低下・歯みがき困難あり。咽頭・口蓋・上部食道の筋の障害による発声困難、嗄声、嚥下困難、肛門尿道括約筋の障害による失禁もある。筋電図に変化。皮膚症状なく筋症状の強く出ているものを多発1生筋炎(polymyositis)という。

　4）他臓器症状：心〔ＥＣＧ上で伝導障害（ｎｏｎ specific T-wave change)、心膜炎、いずれもまれ。〕・肺〔5～10％に間質性肺炎（抗Jo-1抗体陽性例に生じやすい）、それに続く肺線維症：労作性呼吸困難・咳嗽をきたし、また死因となりやすい〕・消化管［嚥下困難・下痢］・腎〔蛋白尿・血尿〕・リンパ系〔肝脾腫・リンパ節腫脹・仮性アンギーナ〕・骨〔粗鬆症〕・関節炎・神経炎。

　5）内臓悪性腫瘍の合併:10～20%。胃癌、次いで乳癌・卵巣癌・悪性リンパ腫。

　６）検査所見：低血色素性貧血・血沈促進・総蛋白量低下・抗核抗体とくに、抗Jo-1抗体、抗ＫＵ抗体、抗nRNP抗体陽性・ＧＯＴ〔↑〕・ＣＰＫ〔↑〕［ＭＭ型ときにＭＢ型］・アルドラーゼ〔↑〕・ＬＤＨ［↑］・尿中クレアチン・ミオグロビン排泄〔↑〕・ＣＲＰ〔↑〕・ａ、およびγグロブリン〔↑〕。

　〔病因〕自己免疫・感染アレルギー〔特に幼児〕・悪性腫瘍。

　〔組織所見〕

　1）皮膚：真皮浮腫・血管拡張・膠原線維膨化・リンパ組織球性細胞浸潤・基底層液状変性、色素失調、石灰沈着。

　２）筋：筋痛ある近位筋〔大腿四頭筋。三角筋〕より生検。浮腫・膨化・線維離開・横紋消失・変性・線維間リンパ組織球性細胞浸潤・線維化。末期に石灰沈着を来すことあり。

　［治療］①安静、②ステロイド剤、③免疫抑制剤〔メソトレキセート・アザチオプリン・ミクロフォスファミド・シクロスポリン〕、④内臓悪性腫瘍の精査、⑤リハビリテーション〔温熱・マッサージ・運動〕=、⑥ビタミンＥ。

　　　小児皮膚筋炎：ウイルス・細菌感染症、ワクチン接種等に続発、皮膚症状が筋症状に先行かつ強い。比較的慢性に経過し〔Brunsting型〕、筋萎縮・関節拘縮・皮膚石灰沈着〔40％以上〕を来すことあり。発熱・筋力低下・嘔吐を生じ消化管多発性潰蕩〔壊死性/血栓性血管炎〕のため死亡することもある〔Banker型〕。