放射線皮膚炎の症状、治療、予防について

 X線、放射性物質、粒子線などによる障害で、線源は異なっても、本質的に同一の障害を来す。初期に生ずる急性皮膚炎と、のちに生ずる晩発障害とを区別する。それぞれレントゲン皮膚炎(X-ray dermatitis)、ラジウム皮膚炎(radium dermatitis)などと呼ぶが、総括して放射線皮膚炎(radiodermatitis)という。

 〔照射による反応〕

 1回線量300~600R〔紅斑量の約60%〕照射後。

 1)初期反応early reaction

 数分~24時間に紅斑を生じ、 2、 3日で消退する〔初期紅斑early erythema〕。

 2)主紅斑main erythema

 8~10日目より再び紅斑を生じ20日ほどっづく〔28日目まで〕。21日頃より色素沈着がオーバーラップし、数週~1年つづく〔軟かい線ほど強い〕。

 〔症状〕

 A。急性放射線皮膚炎:照射線量がさらに大であると、紅斑・浮腫・水疱・びらんのような強い反応を示し、灼熱感・疼痛があり、数週~数力月後に色素異常・毛細血管拡張・萎縮・永久脱毛を残して治癒。1、000R を超えると急速に難治性の潰瘍を形成する可能性がある。

 B。亜急性放射線皮膚炎:少量長期では紅斑・色素沈着がより強く、1ヵ月3、000Rでは落屑し〔乾性放射線皮膚炎(radiodermatitis sicca)]、後遺症は目立だないが、 5、 OOORとなるとびらんし〔湿性放射線皮膚炎(r。 exsudativa)〕、萎縮・色素異常などを残す。

 C。慢性放射線皮膚炎[放射線皮膚]〔付図13-6〕:少量長期の時に多い。

 1)萎縮期:皮膚乾燥・小皺・光沢・色素異常・毛細血管拡張・永久脱毛・爪変化。

 2)角化期:肥厚硬化・現状角化〔X線角化症(X-ray keratosis)〕。

 3)潰蕩期:自然に、あるいはわずかの外傷で難治性潰蕩となる。

 4)癌化期:角化症、潰瘍、ときに萎縮皮膚が癌化〔多くは有棘細胞癌〕。癌化は放射線皮膚が発生してから平均15~20年後に発する。まれに肉腫を発生。

 〔予防〕①放射線療法を開始するときは、既照射の有無を問診、②よそで照射を受けぬよう注意、③線量など確実な信用のおける器械を使用、④計画的な照射、⑤過照射を避ける、⑥照射面を外的刺激より保護する。

 〔治療〕

 1)急性期:熱傷に準じた局所療法。

 2)慢性期:外的刺激より保護、油性軟膏塗布、植皮による整容一機能障害の除去癌化への予防。

 3)癌化期:外科的療法、抗腫瘍剤〔全身的または局所的〕、ときに放射線療法。

 放射線による晩発性障害:Sulzbergerらによれば、生涯総線量が軟X線で1、 OOOR、超軟X線で5、 OOOR以下であれば、晩発障害〔慢性X線皮膚炎〕は発生しないという。ただし1回線量と照射間隔とが問題であり、画一的とはいえない。例えば1。8/の酒でも一晩で飲めばひっくり返るが、何日もかかって飲めば二日酔もない。同じように1回少量照射後、組織回復に十分の時間があれば、晩発障害は生じないですむ。