川崎病、急性熱誠皮膚粘膜リンパ節症候群 mucocutaneous lymph-node syndrome〔MCLS〕

 [症状]85%が4歳以下で男女比1。4: 1。

 1)前駆症状なく〔ときにカゼ気味]、原因不明の39℃前後の発熱が5日以上持続〔通常1~2週、ときに3~4週]、抗生物質に反応しない。発熱が11日以上続くと冠動脈瘤を発生しやすい。

 2)眼球結膜充血〔85~90%、毛細血管拡張のみで炎症状はない〕。

 3)急性頚部リンパ節腫脹。母指頭大より鶏卵大、圧痛強い、化膿自潰なし。60~70%。

 4)口唇の発赤・乾燥・亀裂[90%]、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤〔90%〕、苺状舌(77%]。

 5)四肢末端の変化:急性期に手掌足底・指趾先端の紅斑〔90%〕と手足の硬性浮腫〔75%、圧痕を生じない〕、回復期に指趾尖の爪皮膚移行部より膜様落屑を生じ〔95%〕、浮腫消退とともに皺を生じ、約1ヵ月で治癒。1、2ヵ月後、爪に横溝をみる〔90%〕。

 6)体幹・顔・四肢に不定形発疹〔多型紅斑様・麻疹様・猩紅熱様・風疹様・じんま疹様〕が出没し、大きく地図状となることもある。水疱・鯔皮の形成はない。皮疹出現率90%以上。 BCG接種部位汪くに接種後4~6ヵ月〕に強く限局性紅斑をみること、 6。5%に無菌性小膿疱の見られることが最近追加された知見である。

 以上1)~6)が主要症状。

 7) MCLS顔貌。充血した眼球と口唇の発赤・腫脹・乾燥。

 8)心血管障害。急性期に70~80%に心障害。微弱心音・奔馬調律・心電図変化〔PR・QT の延長・低電位傾向・ST・T の変化〕・不整脈など心筋炎・心膜炎の徴候・冠動脈炎を高頻度に発し、冠動脈瘤を後遺症として残し、一部が狭窄・閉塞に進展して心筋梗塞発作や突然死を来す。心電図・心エコー・動脈撮影などでのチェックを続ける。

 9)その他。下痢・嘔吐・腹痛、蛋白尿、咳・鼻汁、関節痛、胆嚢腫大、髄膜刺激症状。

 〔検査所見〕血沈促進・白血球増多・核左方移動・血小板増多[100~150万〕・CRP(+)・ASLO(-)・トランスアミラーゼ上昇・α2グロブリン増加。

 〔組織所見〕乳頭層浮腫、血管周囲性リンパ球浸潤。血管炎の有無に両論あり。

 〔疫学〕昭和30年頃より発生、昭和42年以降急増傾向あり。生後6ヵ月~1年6ヵ月間にピーク、累積8万名を超える。

 〔予後〕比較的良いが、心障害は約17%に残り、これにより1~2%が死亡〔1歳以下男子に多い、突然死〕。再発例は2%以下。

 〔病因〕非感染説〔合成洗剤アレルギー・水銀アレルギー・ダニ抗原〕と感染説がある。後者にはリケッチア、細菌〔溶連菌・新サンギス・プロピオニバクテリウム・ダニペクター・エルシニアスドツペルクロージス]、カンジダ、ウイルス〔一般・EB・レトロ・新型〕がある。 1986年頃から米国でレトロウイルス説が相次いだが本邦では証明されていない。川崎は原因未確定であるが「感染症膠原病の中間型」と表現している。

 〔治療〕急性期は心管理のため入院させ、アスピリンを主体とした抗血栓療法、これにアークロブリン併用。輸液。回復後、冠動脈瘤の残った場合は抗血栓療法を続ける。冠動脈瘤は半数が1、2年の加療で治り得る。