凝固異常、毛細管支持組織脆弱化、蛋白代謝異常による紫斑 


凝固異常による紫斑
 
 凝固時間が延長する。

 A。血友病haemophilia : 劣性伴性遺伝〔ほとんど男子のみ〕。血漿中トロンボプラスチン生成因子である抗血友病グロブリン(anti-hemophilic globulin ; AHG)の欠如による。軽微外傷で出血斑・血腫を生じ、関節内出血は関節強直を来す。種々の亜型がある。

 B。プロトロンビン欠乏症:新生児メレナ、ビタミンK欠乏症。

 C。フィブリノーゲン欠乏症:肝疾患、妊娠、蛇咬症。

 D。電撃性紫斑purpura fulminans [Henoch 1887]:幼児を侵し、広範な出血を来す。脳にも出血し、脳症状・高熱を呈し、多くは死亡。猩紅熱・レ球菌性扁桃炎・水痘などの急性感染症に続発。第V因子低下、アンチトロンビン増加。 DIC症候群の一型。

 

 

蛋白代謝異常による紫斑

 クリオグロブリン血症、高グロブリン血症、マクログロブリン血症、クリオ蛋白血症[クリオグロブリン・クリオフイブリノーゲン]などによる[cES-p。 292、蛋白代謝異常〕。

 

毛細管支持組織脆弱化による紫斑

 A。老人性紫斑purpura senilis 〔Bateman 1835〕

 老人の主として手背・前腕伸側の萎縮した皮膚にごく軽微な外傷で斑状の出血が生じ、紫紅色より褐色に転じ、かつ反復する。弾力線維変性のような支持組織の脆弱化により血管が破れやすく、一寸柱や机の角に当ったくらいの外傷で発し、粗な結合組織の間に広く拡大。新旧が入りまじり、吸収も悪いので数週に及ぶ。OB。ステロイド紫斑steroid purpura

 ステロイド剤長期投与中〔内服または強い外用剤〕に生ずる紫斑で、女子かっ高齢者に多い。点状出血〔上肢・前胸〕と斑状出血〔四肢末梢および関節背面〕とがあり、ごく軽い圧迫で生ずる。ステロイドによる膠原・弾力線維〔支持組織〕の変化、小血管壁の変化に由来する。内臓出血合併の有無に注意。老人性紫斑と病因も症状もよく似て区別しがたいこともある。

 C 。 Ehlers-Danlos 症候群

 D。壊血病scurvy、 Skorbut
   ビタミンC欠乏で、血管壁が脆弱となり透過性が高まる。下肢仲側・鼻背などに、主として毛孔中心性に出血、歯肉出

 血腫脹・食思不振・全身倦怠感を伴い、幼児では骨端離脱を来す[Moller-Barlow病]。放置すれば貧血・衰弱死する。ビタミンC一新鮮野菜投与・現在はまれ。

E、デビス紫斑purpura Davis

  〔同義語〕女子〔再発性〕深在性紫斑〔多少異なるとの説もある〕、遺伝性家族性単純紫斑

  [症状]成人女子の四肢、特に膝蓋部を中心に生ずる紫青~紫褐色の小豆から指頭大の紫斑で、数個生じ、1週間ほどで消失。全身違和感・軽度関節痛を伴うことが多い。遺伝関係が認められ、毛細血管抵抗減弱の他、大した検査所見はない。

F。その他:悪液質・急性感染症など。

  black heel :運動選手の足底、とくに踵にみられる小出血点、角層内出血で、急激な停止〔バスケット・テニス〕により踵の皮膚が後方に水平に押され出血し、これが角層に出る。