痒疹prurigo:小児ストロフルス、黒色痒疹、フォックスフォアダイス病


 丘疹ないしじんま疹様丘疹を主体とし、傲庫を伴い、慢性に経過。個疹の初期は紅斑・膨疹あるいは漿液性丘疹の状態で、直ちに充実性丘疹〔痒疹小結節(prurigokn乱chen)〕となり長く続く。しばしばリンパ節腫大〔痒疹便毒(Prurigobubo)]を伴う。

1。急性痒疹prurigo acuta〔ストロフルス(strophulus)〕

 〔症状〕大部分が小児を侵し〔小児ストロフルス(strophulus infantum)、小児じんま疹様苔癬(lichen urticatus infantum)〕、食餌性・虫剌後に生ずるじんま疹様丘疹で、紅斑・膨疹・漿液性丘疹に始まり直ちに充実l生丘疹となる。掻破のため小水疱・小疱皮を曩邨こ有し、比較的急性に経過する。ときに発熱・食思不振・睡眠障害などの前駆症を伴う。瘢痒のため不眠・神経衰弱となり、痩せたいらいらした児となる。掻破のため二次感染を来し、膿疱疹一痛・リンパ節炎を続発する。夏季に多い。成人の場合は虫剌〔南京虫・シラミ〕によることが多い。四肢仲側・体幹に多い。

 〔病因〕食餌〔卵・大豆・豚肉〕に対する過敏症および虫剌に対する異常経過。

 〔予後〕夏季反復、学童期には自然治癒。

 〔治療〕①食餌の注意〔イ固人差あり・また厳密すぎぬように〕、②胃腸を整調、③変調療法〔ビスタグロブリンノイロトロピン・転地〕、①カチリ・抗ヒ剤・NSAIDステロイド軟膏、⑤抗ヒ剤ないし抗アレルギー剤〔ケトチフェン・オキサトミ罔、⑥精神安定剤、⑦清潔、⑧虫に注意。

 

2。亜急性ないし慢性痒疹prurigo subacuta s。 chronica

 〔同義語〕互いに移行もみられ、余り細かく分けることは意味がない。

 〔症状〕成人に多く、比較的単純な像〔単純性慢性痒疹(pr。 chr。 simplex)〕のものと、中高年者の体幹・大腿に多く痒疹結節と苔癬化局面とから成る多様な像〔多型慢性痒疹(pr。 chr。 multiformis Lutz 1957)]のものがある。前者は瘢痒のあるじんま疹様小丘疹で、掻破により痂皮を頂点に生じ、数日で痂皮は脱落、辺縁色素沈着rIEの小瘢痕を残し、主として成人の四肢伸側を侵す〔結節性痒疹(pr。 nodularis)。後者は痒疹性小結節のほかに集簇性苔癬化小結節と湿疹様局面とが存在し、全体に多彩な像を示す。

 〔鑑別診断〕①虫刺症[とくに疥癬]、②アトピー性皮膚炎、③自家感作性皮膚炎、④丘疹性壊死性結核疹、⑤壊死性血管炎、⑥水痘、⑦扁平苔癬、⑧壊死性座瘡、⑨急性痘瘡状苔癬様粃糠疹。

 〔治療〕基礎疾患の治療を第一とし、止痒剤を投与する。


3。色素性痒疹prurigo pigmentosa [Nagashima 1971〕

 思春期女子の背・項・上胸部に好発。発作性にじんま疹様膨疹、次いで紅色丘疹が反復出現し、あとに粗大網目状色素斑を残す。衣類の刺激・発汗などが関与(?)、合併内臓病変なく、難治でDDSに反応することあり。

   妊娠性痒疹prurigo gestationis : 妊娠3~4ヵ月頃、四肢仲側〔および体幹〕に掻痒、次いで丘疹を生じ、掻痕・小潰瘍・結痂あり、分娩とともに消退。2回以後の妊娠で発し、妊娠ごとに発生。

 妊娠中毒の痒疹性皮膚反応。。pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy [Lawley 1979〕〔PUPPP〕:初産婦の妊娠後期に生ずる癌痒の強い紅斑を伴うじんま疹様丘疹・局面の混在で、腹〔妊娠線部〕・殿・大腿・四肢を侵し、分娩後急速に消退し再発はない。全身状態良好。約70例の既報告。

 黒色痒疹prurigo melanotica 〔Pierini-Borda 1947〕:肝疾患に併発。上背・胸・上肢・側頚に掻痒ある小結節が多発。進行とともに暗褐色色素沈着がびまん性ないし網目状に発生、掻痕、白色小瘢痕を混在する。

 フォックス・フォアダイス病Fox-Fordyce's disease [1902〕

 主として腋窩、その他、乳暈・胱窩・外陰部などのアポクリン腺存在部に、半米粒大の充実性丘疹が集族性に生じ、激痒がある。毛は粗となり、短く切れさらに脱落する。苔癬化はしない。思春期から中年の女子に多く難治。月経前・月経中に増悪することが多く、また妊娠時軽決、閉経期治癒もある。アポクリン汗管が角化で閉塞し、表皮内に汗があふれて海綿状態を来し、海綿状態・微小水疱・表皮肥厚を来したものでホルモンの影響が考えられる。アポクリン汗疹(apocrine miliaria)。男性ホルモン軟膏、ステロイド軟膏塗布。