カポジー肉腫

ポジー肉腫

 Kaposi's sarcoma

 [同義語]sarcoma idiopathicum multipleχ pigmentosum Kaposi 〔1872], sarcomaidiopathicum multipleχ haemorrhagicum Kaposi

 〔症状〕四肢〔特に足〕に発し,次第に中枢側に及ぶことが多い.はじめ浮腫を生じ,やがて赤褐~青褐色の紫斑・浸潤局面が発生,次第に進行して結節状~海綿状となる.疼痛あり,出血しやすい.リンパ節・内臓にも同様変化を生ずるが自所性多発と考えられる.

 [発症誘因]外傷・循環障害〔凍瘡〕・感染〔丹毒〕・血管炎・ホルモン失調・免疫抑制剤投与などが誘因に擬せられ,ユダヤ人・イタリア人・ロシア人・アフリカ黒人に多い.男子に偏し40歳以降に発症する.すなわち基礎病態は免疫不全状態であり,①AIDS,②ステロイド免疫抑制剤を投与された喘息一肝硬変・ネフローゼ症候群など,③同様投与を受けた類天疱瘡・SLE・皮膚筋炎などの自己免疫性疾患,④白血病悪性リンパ腫,⑤癌〔子宮・胃〕,⑥腎移植後,⑦ハンセン病などに合併する.従ってこれをKaposiの報告したユダヤ人に多い古典型,赤道部黒人に多いアフリカ型,免疫抑制療法による医原性型,および近時注目を浴びてきたエイズ型と大別することができる. HLA DR 5 , サイトメガロウイルス感染との関連も考えられている.

 〔組織所見〕①初期に血管の増加と拡張,浮腫,出血,内皮細胞突山〔出血期〕,②血管蛇行,内皮肥厚,周囲に紡錘形細胞(spindle cell)が増殖し始め,紡錘形細胞・内皮細胞は赤血球を貪食する〔肉芽腫・血管肉腫期〕,③まれに線維化を来す〔退縮期〕.両細胞は多分化能を有する原始間葉系細胞(primitive mesenchymalcell)由来で,比率や分化方向の差により管腔要素の度合も異なる.

 〔予後〕2~8年で死亡.直接死因は消化管・肝の出血.まれに自然治癒( 2 %).エイズ型はエイズの病状に左右される.

 〔治療〕放射線,抗腫瘍剤.

   〔付〕Pseudo Kaposi肉腫〔Earhart 1974〕:趾背にはじまり足背・下腿へ進行するカポジー肉腫類似の暗赤色結節・潰瘍を生ずるが,動静脈異常〔A-V shunt:先天性,外傷性,とくに透析患者〕が基底にあって生ずるものでangiodermatitisに近い. shuntの処置が必要.

〔C〕リンパ腫と白血病

Lymphoma & Leukemia

 リンパ腫は組織球〔マクロファージ〕・B細胞・T細胞の悪性腫瘍で,それぞれホジキンリンパ腫(HL),非ホジキンリンパ腫(NHL),皮膚T細胞リンパ球(CTCL)と称する.わが国ではHL, NHLは少なくCTCLが最も多い.

 CTCL は菌状息肉症,セザリー症候群,紅皮症を伴うT細胞性慢性リンパ性白血病,リンパ腫様丘疹症を一括してLutzner〔1975〕が提唱したものであるが,これらに一致しない結節・腫瘤を主像とするT細胞腫瘍も多く,これをも含めてCTCLを広く考えると整理しやすい.成人T細胞白血病/リンパ腫〔ATLL〕もこれに含めることができる.

 Edelson〔1980〕は表皮親和性〔表皮向性〕(epidermotropism}の有無から2型に分けたが,併存,移行がみられる.