菌状息肉症

 mycosis fungoides [MF]

 [症状]3期に分かつ.

 1)紅斑期[前息肉症期]erythematous or premycotic stage : 多少鱗屑を有する大小の紅斑をもって始まり,湿疹[eczematoid stage ともいう〕・乾癬・局面性類乾癬・脂漏性湿疹などに似,軽快再発を繰り返しつつやがて固定し持続する.数力月から数年に及び,多少の 痒あり,また色素沈着,脱失,萎縮,毛細血管拡張などを伴う.

 2)扁平浸潤期plaque stage : この紅斑が次第に浸潤して硬く扁平に隆起,拡大し,中央部はむしろ炎症症状が消退して環状・馬蹄形などを示すことがある.ときに湿潤・びらん.この頃よりリンパ節の系統的腫脹が目立ってくる.以上の2期が10~20年にわたり持続する.

 3)腫瘍期〔息肉期〕tumor or mycotic stage : この浸潤局面上に結節,腫瘤を形成,自潰する.リンパ節腫脹も進み,肝・脾も腫大し,悪液質に陥って1~数年で死亡する.皮膚は末期にしばしば多彩皮膚状となる.

 〔組織所見〕

 1)紅斑期:初期は真皮上層のリンパ球・組織球浸潤で通常の炎症と区別しがたいが表皮内に単核球が孤立性かつ海綿状態なく侵入[表皮向性epidermotropism]しているのが特徴で,まれに集簇して小膿瘍となる.臨床的に多彩皮膚状のものでは表皮菲薄化し表皮下に帯状浸潤,毛細血管拡張,出血,色素失調を来す.

 2)扁平浸潤期:息肉症細胞(mycosis cell)〔クロマチンに富む不規則な形の核の異型T細胞〕が斑状~帯状~びまん性に増殖,表皮向性をも示す.リンパ球・組織球・好酸球・形質細胞も種々の割合に混ずる(polymorphous).表皮内に明るい空隙を生じ,ここに息肉症細胞など単核球が塊状に集まるのをポートリエ微小膿瘍(Pau trier's microabscess)〔付図2-20〕と称しMFの特徴の一つである.表皮突起も延長する.

 3)腫瘍期:腫瘍細胞は真皮から皮下にかけて密に増殖し,表皮に微小膿瘍が増え,また圧迫壊死で潰瘍化する.息肉症細胞が大部分を占め,それは大小不同・染色性不同一ミトーゼなど異型性が強くなる[芽球化し胞状核となり組織球型MLに似ることもある].

 4)リンパ節:クロマチンに富む不規則な形の核の細胞が増殖するが初期にはMFと診断を下すのがむつかしい.末期はSRや芽球化細胞がみられる.