23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(ニューモバックスNP)の効果

 

 歴史的に述べると,肺炎球菌易感染地域(軍隊,南アフリカ連邦の金鉱山など)での初期の4価,7価莢膜ワクチンの効果は明白なものであったが,この要因には2つのことが挙げられる。 1つはその地域に発生した肺炎球菌の莢膜型の数が少なかったこと,および易感染集団たったことである。当時のワクチン含有の莢膜抗原量は50μgであったことに加え,抗体反応値が高く,菌型も適切だったために,肺炎球菌性肺炎,侵襲性を伴う同感染症にも明白な発生抑制が認められたものであろう。したがって,本感染症の死に率も有意に低下したのである。

 

 しかし,23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(ニューモバックスNP)時代に入ったのは,①欧米,日本など先進国の肺炎球菌莢膜型が多様性を持つに至ったこと,②23価のように多数になったため,精製も進み25μgの各抗原量となったが,③その含有莢膜型は各先進国地域の80~85%を超える肺炎球菌菌型分布に対応できるものとなっていることなどの背景によるものである。

 

 第二次世界大戦前のように,病原性の著しく高いI,II,Ⅲ, IV, V型(現在の1, 2, 3, 4, 5に同じと考えてよい)などの少ない数の莢膜血清型の場合であれば,その有効性は容易に確かめられたのであるが,23価のワクチン型の効果判定で有意差(p < 0.05)を得るためには,その必要対象人数は44,600人を必要とする。

 

 したがって,今日の23価すなわちニューモバックスNPの臨床試験は,多くの同質のデータを集めた解析(メタアナリシス)や,多数の例を大学病院などの高レベルの患者を対象とした解析が大きな意味を持つようになっている。

 

Butler JC らの示した結果は,米国疾病予防管理センター(cancers for Disease Control and Prevention : CDC)も協力して行った14年間の成果である。この結果はワクチン含有株に対する効果が示されている点でも注目されるとともに,脾不全患者での肺炎球菌感染症の発生抑制が77%と高い率を得ている点も注目される。