64歳以下への再接種のリスク

 現在わが国では,1988年の認可以来1回摂取のみしか,認められていない。65歳になった時点で5年以上経過している場合には再接種が認められているほか,脾不全や免疫不全例には65歳以下でも5年後の再接種が認められている。このニューモバックズNPの使用勧告は1997年に発表されたもので,再接種の必要性をめぐって,日本では医師と患者の両者に困惑感が拡がっている。同一のワクチンがなぜ長期に亘って再接種が認められないのかという疑問である。

 

 現在,日本感染症学会,日本呼吸器学会,日本化学療法学会,日木環境感染学会の4学会からも厚生労働省に米国同様の方式での再接種認可の要望書が提出されている。その上,医師の自己責任で患者の要望に応えで再接種しているが,少なくとも筆者の元に異常副反応の出現の報告は届いていない。

 

 肺炎球菌ワクチン研究会としては,すでに5年以上前に本ワクチン接種の高齢者集団を対象に慎重に再接種を行い,その抗体の上昇と副反応についての発現を検討する方向を模索しており,実際にその実現が期待されている。 Mufson MA らの報告した再接種の結果を要約すると,第1回より6年後の第2回接種(再接種)の抗体の上昇は第1回目よりやや低価であり,その接種部位の痛みと腫脹はやや強かった。その後第3回の接種もアラスカ原住民で実施されたが,安全であった。しかしこの全3回の接種は一般の高齢者で実施するためのものではなく, CDCも,第3回の一一般接種についてもその実施例が著しく少ない点を挙げ,勧めてはいない。

 

 ニューモバックスは元来多糖体抗原であり,T細胞を介して抗体産生B細胞を誘導するのではなく,直接B細胞に作用して抗体を産生するのであり,記憶T細胞は産生されないのである。

 

 ニューモバックスNPの重要接種対象は,肺炎球菌感染を惹起しやすい患者と,肺炎球菌感染により症状の悪化する患者(両者を総合してハイリスク患者と呼ぶ)である。具体的には慢性閉塞性肺疾患(coPD ; 特に肺気腫)や心不全の患者や喫煙者である。喫煙者に対する本ワクチン接種勧告が最近cDcより発表された。喫煙者はその感染率が有意に高いことのほかに,将来COPDになりやすいという背景がある。