7価以上の血清型を含む多価conjugateワクチンの開発

 

 PCV-7でIPDの相当多数例をカバーできることは上述したが,より多くの血清型をカバーできるワクチンが開発されれば,より広く肺炎球菌感染症を予防できると誰もが考えるであろう。 しかし,より多価のワクチンを開発するにはさまざまな障壁も存在する。まず,より多種の多糖体を含有するconjugateワクチンを製造すること自体,高度な技術が必要である。また,ワクチンに含有されるキャリア蛋白の総量が多いと,多糖体抗原に対する免疫反応が不良になるという問題もある。PCV-7の製造過程をみればわかるように,含有する多糖体抗原の種類が増えればキャリア蛋白量も増加する。

 

 現在世界に普及しつつあるPCV-7 (Prevenar )は,各血清渭の多糖体量はHibワクチン多糖体より少量である。4, 9V, 14, 18C, 19F, 23Fはそれぞれ2μg, 6Bは4μg含まれ,総多糖体量は16μgである。 Prevenar R以外にも,当初は幾種類ものPCVの臨床試験が実施された。 しかしその中には,すでに研究開発が中断されたものもある。

 

 そのような中で,より多価のワクチン開発も進行中である。グラクソ・スミスクライン社は11価conjugateワクチンを手掛けた。本ワクチンは,11種類の血清型それぞれ1μgずつの多糖体抗原が,インフルエンザ菌のD蛋白に結合されたconjugateワクチンである。キャリア蛋白としてインフルエンザ171のD蛋白を用いることにより,肺炎球菌とインフルエンザ菌双方に対する予防効果を狙ったものであり,それら2種類の菌が原閃となる中耳炎に対しても ・定の予防効果が得られた。しかし,血清型3に対する予防効μが不十分であったため,10価conjugateワクチンとして実用化を目指している。PCV-7に含まれる7種の血清型に加えて, 1, 5, 7Fの血清型多糖体抗原を介有するワクチンとなる。一方Wyeth社は, PCV-7と同じくジフテリア蛋白CRMをキャリア蛋白に用いた13価conjugateワクチンの臨床試験を進めており,これは10価ワクチンの血清型にさらに3, 6A, 19Aを加えたものである。