遺伝子の損傷状態は簡単に測定できる

 「ガンは遺伝量が傷ついて起こる病気です。糖尿病、高血圧症、肥満などの生活習慣病や白内症、緑内症、アルツハイマーアトピーといった病気や老化も、すべて遺伝子が傷つくことで起こる病気です。遺伝子を傷つけるものが、最近よくいわれている活性酸素です」

 

 これが、気になった先生の発言だ。

 

 活性酸素の弊害は、よく知られている。問題は、活性酸素によって自分の遺伝子がどれほど傷ついているかということである。それが分かれば、ガンなどの生活習慣病をはじめとするいろいろな病気の早期発見が可能となり、手遅れにならない前に手を打つことも可能になる。

 

 「遺伝子の酸化損傷の診断は血液を使ってもできますが、尿を使えば簡単にできます。尿を調べると、遺伝子が分解した断片とその酸化物が出てくるからです」

 

 遺伝子には素人同然の私にとって、遺伝子の損傷といった問題は手がかりのないむずかしい間題に思える。それを、松永先生はさらりといってのけた。

 

 遺伝子はA・T・G・Cの4つの塩基から成り立っているが、なかでもG(デオキシグアノシン)がもっとも酸化されやすい。そこで、尿のなかのデオキシグアノシンの酸化されたもの(80H‐dG)を調べれば、身体のなかでどれくらい遺伝子の損傷が進んでいるかが分かることになるという。

 

 「それに、遺伝子診断で、病気や老化、性格などに関する検査もできます」

 

 「尿による遺伝子酸化損傷診断」は、病気予防の大きな力になると思われるが、遺伝子栄養学研究所では、2001年から「尿による遺伝子酸化損傷診断」と「遺伝子診断」を実施している。ついでに言っておくと、尿検査でタバコを吸う人の80H‐dGは、吸わない人の約3倍だという。タバコを吸う人は、吸わない人よりも遺伝子損傷が約3倍進んでいるという恐ろしいデータである。

 

ガン臨床医はなぜ「メシマコブを」使うのか  北用栄志[著] 定価 本体1000円(税別)