外因性光線過敏性皮膚症:光毒性、光アレルギー性

 光線が、すべての、あるいは大きな因子として作用し、皮膚に変化を与える時、これを光線性皮膚症(light eruption、 Lichtdermatose)と称する。最も簡単なものがひやけ〔日光皮膚炎〕であり、これに対して、光線に過敏な状態にあるため生ずるものが、光線過敏症である。

 紫外線〔UV〕はUVC〔10~290 nm〕、 UVB〔290~320 nm〕、 UVA〔320~380 nm〕に分かれ、 uvcはオゾン層で吸収されて地表に届かない。すなわち地表に到達する太陽光線は、波長約300 nm 以上の連続スペクトルであり、紫外線・可視光線・赤外線の比は6 :52:42である。正常の状態で皮膚に障害を与えるのはUVBで、光線過敏症に関与するのはUVAおよび可視光線〔380~810 nm〕である。

1。日光皮膚炎dermatitis solaris、 sunburn、 Sonnenbrand

 過度の日光曝射により生ずるもので、海水浴・スキー・戸外労働などでみられる。いわゆる「ひやけ」。作用波長は中波長紫外線UVB〔く320 nm〕。

 数時間後には紅斑〔日光紅斑(erythema solare)]を生じ、次いで浮腫・水疱となり、灼熱感・疼痛がある。水疱膜は薄。く、落屑と化し、色素沈着ないし脱失を残して治癒する。長期間曝射では、熱射病を合併し、高熱一意識混濁を来す。局所治療は表皮~真皮浅層熱傷に準ずる。

 光線過敏性皮膚に、生理的範囲の光線が作用して炎症を生ずるもので、光力学的な作用を有する感作物質の存在が必要である。

 A。外因性光線過敏性皮膚症

 化学物質が外的・内的に皮膚に到達したのも、日光照射を受けて発症する。2つの発症機序がある。

 1)光毒性phototoxicity : 皮膚に存在する物質が、特定波長〔その物質の吸収波長〕〔殆んどがUVA( >320nm)〕の光線を吸収して励起され細胞成分へ無制限なエネルギーの移動が起こって障害を生ずる。物質により障害部位が異なる〔ソラレンはDNA、アントラセンは細胞小器官、プロトポルフィリンは細胞膜〕。十分の量の光感作物質と、十分の量の特定波長の光線があれば、すべての人に生じ得、したがって1回の照射で起こり、潜伏期もない。この光感作物質〔光毒性物質〕として、ソラレン・テトラサイクリン・コールタール・アントラセン・スルフォンアミド・サイアザイド剤、色素類〔アクリジン・ピリジン〕などがある。臨床的に紅斑と浮腫が主症状で、次いで落屑・色素沈着を来す。組織学的に表皮壊死・変性、真皮多核好中球浸潤。

 2)光アレルギー性photoallergy : 皮膚に存在する物質〔光感作物質〕が、特定波長の光線〔多くはUVA、一部可視光線〕を吸収して化学変化し、新しく出来た物質

 〔光抗原(photoallergen)〕がハプテンとなって生体蛋白(carrier protein)と結合して完全抗原となって生体を感作する。その後再び原物質が皮膚に到達し、ここに光線が照射されると光抗原と化し、そこにアレルギー反応を生ずる。このときは、感作物質・光線ともに、ごく少量で起こる。この光感作物質としてスルフォンアミド・サイアザイド・クロルプロマジン・経口糖尿病剤・グリセオフルビン・抗ビ剤などがある。

 この光感作物質は、次の2経路によって皮膚に達する。

  a) 皮膚外面より:化粧水〔オーデコロン〕・香料・香油〔ベルガモット油:

 ペルロック皮膚炎〕・果汁〔イチジク・セロリ〕・タール・色素〔アクリジン系・エオジン系〕によることが多く、これを光接触皮膚炎(photo-contact dermatitis)という。

  b) 体内部より:薬剤〔サルファ剤・フェノサイアジン・抗生物質など、食品[ソバ・アカザ]などが体内に摂取され、皮膚に到達して生ずる。

 光貼布試験photo-patch test

第1日:貼布試験と同様の方法で被検物質を貼布。同時に最小紅斑量(MED)を測定。

第2日〔24時間〕:貼布部の1/2に、 MEDよりわずかに少量の光線〔320~400 nm〕を照射。

第3日〔48時間〕:判定。貼布十照射の部位のみに発赤・腫脹・丘疹があれば陽性。

 光内服試験photo-drug test

 1)薬剤内服を20日以上中止しMED測定。

 2)常用量を2日間投与。

 3)投与終了2時間後にMED測定。

 4) MED低下があれば陽性。