菌状息肉症の病期分類

 菌状息肉症の病期分類

1) Lutzner分類〔1975〕:Ⅲ期の次にリンパ節侵襲,内臓侵襲期を加えて5期分類.

2) CTCLワークショップ分類〔1978〕:TNM病変の有無で4期に分ける。

 〔内臓侵襲〕その25~50%に皮膚外〔リンパ節・脾・肝・肺・腎・消化管〕に病変を生ずる.予後不良〔死亡率80%〕であるが二次感染が直接死因のことも多い.

 〔検査所見〕病期進行とともにリンパ球幼若化反応・細胞性免疫〔PPD・DNCB反応〕低下.血中セザリー細胞〔15%以下〕もみられる.

 〔病因〕 T細胞リンパ腫.発症に,最初から腫瘍か,最初は免疫刺激に対する反応でのち腫瘍化するかの2説がある.腫瘤細胞は80~90%がinducer/helper cell 〔CD4陽性〕,10~20%がsuppressor/cytotoxic cell 〔CD8陽性〕といわれる.

 〔分類〕

   1)古典型, Alibert-Bazin型:上記3期を経過する.

   2)電撃型MF d'emblee, Vidal-Brocq型:紅斑・扁平浸潤期経過せず,腫瘍形成をもって始まり,経過の比較的早い型.

   3)紅皮症型, Besnier-Hallopeau型:初期より紅皮症を呈するものと末期に至って紅皮症状になるものとがある.リンパ節・脾の腫脹,脱毛を伴う.

 〔付1〕セザリー症候群Sezary syndrome 〔1938〕〔付図26-44〕

 強い 痒を伴う紅皮症,リンパ節腫脹,脾腫,異型Tリンパ球[セザリー細胞:核が著明なconvolutionを示す.大きさ15~20μ]の末梢血中出現,白血球増多症〔うち5~20%がセザリー細胞〕を主像とし,男子に多く,多くは予後不良であるが,良性経過のものもある.セザリー細胞は息肉症細胞とも区別しがたく,末梢血の他,リンパ節・皮膚にも見出される.菌状息肉症の白血病化〔骨髄は正常なので,セザリー細胞は皮膚またはリンパ節由来か〕,さらにはATLLとの異同が問題となっている.   表皮向性の極端に強いMFの1型か.比較的大きい落屑既紅斑で中央治癒傾向あり,四肢に限局性(./)に生じ,単発または数個多発融合.多数の異型T細胞〔MF細胞と同じ〕が表皮下層に侵入し,微小膿瘍もみられる.

4.壊疽性鼻炎rhinitis gangraenosa (壊死性鼻肉腫necrophiles Nasensarkom)

 古くはWegener肉芽腫症を含めていたが,現在はこれを除き,肉腫陛のもののみを壊疽性鼻炎または顔面悪性肉芽腫(malignant granuloma of the face)もしくは顔面正中部致死性肉芽腫(lethal mid玉ne granuloma of the face)と称する.鼻閉・鼻漏で始まり,鼻腔に壊死・潰癪を生じ皮膚・咽喉にも波及,急速に死の転帰をとる.組織学的に肉芽腫様変化と異型細網細胞の増殖とを認める.初期に血管中心性変化〔壁肥厚・内皮肥厚・血管壁壊死〕を示すことから壊死性血管炎に属せしめるものもある

 

 菌状息肉症に移行し得る疾患として局面状類乾癬と毛包性ムチン症(ムチン性脱毛症)とがある.

〔155, Wegener肉芽腫症〕.

菌状息肉症

 mycosis fungoides [MF]

 [症状]3期に分かつ.

 1)紅斑期[前息肉症期]erythematous or premycotic stage : 多少鱗屑を有する大小の紅斑をもって始まり,湿疹[eczematoid stage ともいう〕・乾癬・局面性類乾癬・脂漏性湿疹などに似,軽快再発を繰り返しつつやがて固定し持続する.数力月から数年に及び,多少の 痒あり,また色素沈着,脱失,萎縮,毛細血管拡張などを伴う.

 2)扁平浸潤期plaque stage : この紅斑が次第に浸潤して硬く扁平に隆起,拡大し,中央部はむしろ炎症症状が消退して環状・馬蹄形などを示すことがある.ときに湿潤・びらん.この頃よりリンパ節の系統的腫脹が目立ってくる.以上の2期が10~20年にわたり持続する.

 3)腫瘍期〔息肉期〕tumor or mycotic stage : この浸潤局面上に結節,腫瘤を形成,自潰する.リンパ節腫脹も進み,肝・脾も腫大し,悪液質に陥って1~数年で死亡する.皮膚は末期にしばしば多彩皮膚状となる.

 〔組織所見〕

 1)紅斑期:初期は真皮上層のリンパ球・組織球浸潤で通常の炎症と区別しがたいが表皮内に単核球が孤立性かつ海綿状態なく侵入[表皮向性epidermotropism]しているのが特徴で,まれに集簇して小膿瘍となる.臨床的に多彩皮膚状のものでは表皮菲薄化し表皮下に帯状浸潤,毛細血管拡張,出血,色素失調を来す.

 2)扁平浸潤期:息肉症細胞(mycosis cell)〔クロマチンに富む不規則な形の核の異型T細胞〕が斑状~帯状~びまん性に増殖,表皮向性をも示す.リンパ球・組織球・好酸球・形質細胞も種々の割合に混ずる(polymorphous).表皮内に明るい空隙を生じ,ここに息肉症細胞など単核球が塊状に集まるのをポートリエ微小膿瘍(Pau trier's microabscess)〔付図2-20〕と称しMFの特徴の一つである.表皮突起も延長する.

 3)腫瘍期:腫瘍細胞は真皮から皮下にかけて密に増殖し,表皮に微小膿瘍が増え,また圧迫壊死で潰瘍化する.息肉症細胞が大部分を占め,それは大小不同・染色性不同一ミトーゼなど異型性が強くなる[芽球化し胞状核となり組織球型MLに似ることもある].

 4)リンパ節:クロマチンに富む不規則な形の核の細胞が増殖するが初期にはMFと診断を下すのがむつかしい.末期はSRや芽球化細胞がみられる.

 各型別でみると,

 1)小型の異型リンパ球が密にまたは散在性に増殖.小さい円い濃い核で正常リンパ球と区別しがたいことが多い.わずかにくびれた核(cleaved)の細胞を混じ,ミトーゼも少ない.原形質に乏しく核が相接してみえる.

 2)核は大きく明るく,またcleavedで,原形質に乏しく相接する.

 3)2種の細胞より成る.小さく濃染する核を持つ未分化の異型リンパ球と,大きく明るく染まる核を持つより分化した大型の異型リンパ球(centroblast/immunoblast:以前は組織球とみなされていた〕が混在する.

 4) large cell lymphoma, immunoblastic lymphoma, centroblastic lymphoma ともいう〔|日細網肉腫〕.大きい胞状の円・楕円・不定形の核で1~2個の核小体を有し,原形質に富むが淡染する.ミトーゼ,くびれた核のリンパ球,ときにマクロファージもみられる.

                     5)EBウイルスによるB細胞の腫瘋化で中央アフリカの子供に多い.比較的大きいリンパ球,ミトーゼの間に明るい大きな原形質を有するマクロファージが散在し,いわゆる星空状(starry-skin pattern)を示す〔ただし皮疹にはこの像はない〕.

非ホジキンリンパ腫

 

non-Hodgkin's lymphoma 〔NHL〕

 炎症性細胞かほとんどなくリンパ腫細胞のみから成り〔monomorphous lymphoma〕,従来の細網肉腫・リンパ肉腫などはこのカテゴリーに入る.いずれもB細胞の悪性化で循環lgの減少があり,一方細胞性免疫は比較的保たれている.

 濾胞型follicular[結節型nodular]とびまん性型diffuseに分つが前者の方が分化していて後者より予後はよい.しかしこの分類はリンパ節・脾のようにリンパ濾胞構造を有する臓器において分別し得,皮膚に浸潤したときははっきりしない.

 皮膚にみられるNHLの分類〔Rappaport〕.

 1)分化リンパ球型well differentiated lymphocytic lymphoma

 2)未分化リンパ球型poorly differentiated lymphocytic lymphoma

 3)リンパ球・組織球混合型mixed lymphocytic-histiocytic lymphoma

 4)組織球型histiocytic lymphoma  5)未分化バーキット型undifferentiated Burkitt's lymphoma

 ホジキン病に比して,①多発しやすく,②リンパ節以外に初発する率が高く,③血行肚播種は頻度がより高くかつ速く,④白血病化〔腫瘍細胞の骨髄侵襲,末梢血中への出現〕しやすく,⑤皮膚原発の率が高く,皮疹を生じやすい〔17%〕.

 〔症状〕結節と浸潤局面を主体とする.結節は弾性硬で次第に増大,半球状~塊状に隆起し,赤褐色調を呈し,表面しばしば自潰して潰瘍となる.単発または自所性(autochthon)に多発,さらに転移する.液性免疫の低下.

 非特異疹として,紫斑・紅皮症・皮膚繙痒症など.

 〔組織所見〕結節型が皮膚に存在するかどうかは疑問[濾胞がみえてもリンパ球組織球混合型の可能性あり]であり,また皮膚のリンパ腫の診断はかなりむつかしい.①浸潤巣は大小あり,真皮から多くは皮下組織にも及ぶ.②異型の核や異型のミトーゼがみられる.③炎症性浸潤に比して細胞は密に接し,核が近接して融合したかのように見える.④浸潤巣は比較的境界明瞭であるが,周囲の膠原線維間に,1~2列に列をなして並ぶような所見〔1列縦隊like Indians in a fik〕もみられる.

〔悪性〕リンパ肉芽腫症

〔悪性〕リンパ肉芽腫症 lymphogranulomatosis cutis (maligna)

〔Sternberg-Paltauf〕

 〔症状〕①発熱とともにリンパ節の系統的腫脹C特に頚部リンパ節〕を来し,一方脾・肝腫をも伴う.②皮疹は多彩で,特異疹[腫瘍細胞の浸潤があるもの]・非特異疹〔反応性皮疹〕に分かつ.

 1)特異疹:5%以下にみられ,まれに皮膚に原発.結節,浸潤性局面のことが多く,また潰瘍化し,さらに皮下結節・丘疹・紅皮症ともなる.

 2)非特異疹:痰痒症・じんま疹ないし紅斑・痒疹・湿疹様病変・紅皮症・色素沈着・後天性魚鱗癬・多彩皮膚など.

 3)二次的に,ウイルス〔帯状疱疹〕・細菌・真菌感染の併発.

 〔組織所見〕4期に分かつ〔Lukes et aL 1966〕.

 1)リンパ球優位型lymphocytic predominance : リンパ球〔および組織球〕が多く,好酸球・好中球・形質細胞は僅少または欠如.壊死や線維化もない.少数の未熟ないし異型の単核球とステルンベルク・リード巨細胞(Sternbeig-Reed giant cells :SR)がみられる.

 2)結節性硬化型nodular sclerosis : 膠原線維が帯状に走り,その問に異型単核球の集塊が結節状に存在,SRは少ないが,大きな明るい細胞(lacunar ce川が多く,これにリンパ球・好酸球・好中球・形質細胞・線維芽細胞・組織球が多数あり,壊死もときにみられる.

 3)細胞混在型mixed cellularity : 多数のSR・リンパ球・好酸球・好中球・形質細胞・組織球・未分化異型単核球の増殖,壊死一線維化も存するが,膠原線維の帯状層はない.


 4)リンパ球消失型lymphocytic depletion : リンパ球はほとんどなく,SRが大部分で線維化もみられる.

 1) 2)は宿主の防御能が強く,治療にも比較的良く反応して予後も良いが, 3) 4)の時期に入るとこれに反して予後が悪い.

   SR細胞:直径15~45μm の大きな細胞で,多核または多房性核を有し,2核のときはmirror imageを示す.核小体は大きく好酸性または無構造に染まり,周囲にクロマチンが少なくhaloをなす.

   lacunar cell : SR の一型で原形質は明るく抜け,中央に多核小体を持つ多房性核を持つ.

 〔病因〕形態的にリンパ球に似るがマクロファージ由来の腫瘤.

 〔検査所見〕T細胞機能不全のため,細胞性免疫の低下があり,一方B細胞機能は末期を除き侵されないので,lgは正常域内に留まる.

 

カポジー肉腫

ポジー肉腫

 Kaposi's sarcoma

 [同義語]sarcoma idiopathicum multipleχ pigmentosum Kaposi 〔1872], sarcomaidiopathicum multipleχ haemorrhagicum Kaposi

 〔症状〕四肢〔特に足〕に発し,次第に中枢側に及ぶことが多い.はじめ浮腫を生じ,やがて赤褐~青褐色の紫斑・浸潤局面が発生,次第に進行して結節状~海綿状となる.疼痛あり,出血しやすい.リンパ節・内臓にも同様変化を生ずるが自所性多発と考えられる.

 [発症誘因]外傷・循環障害〔凍瘡〕・感染〔丹毒〕・血管炎・ホルモン失調・免疫抑制剤投与などが誘因に擬せられ,ユダヤ人・イタリア人・ロシア人・アフリカ黒人に多い.男子に偏し40歳以降に発症する.すなわち基礎病態は免疫不全状態であり,①AIDS,②ステロイド免疫抑制剤を投与された喘息一肝硬変・ネフローゼ症候群など,③同様投与を受けた類天疱瘡・SLE・皮膚筋炎などの自己免疫性疾患,④白血病悪性リンパ腫,⑤癌〔子宮・胃〕,⑥腎移植後,⑦ハンセン病などに合併する.従ってこれをKaposiの報告したユダヤ人に多い古典型,赤道部黒人に多いアフリカ型,免疫抑制療法による医原性型,および近時注目を浴びてきたエイズ型と大別することができる. HLA DR 5 , サイトメガロウイルス感染との関連も考えられている.

 〔組織所見〕①初期に血管の増加と拡張,浮腫,出血,内皮細胞突山〔出血期〕,②血管蛇行,内皮肥厚,周囲に紡錘形細胞(spindle cell)が増殖し始め,紡錘形細胞・内皮細胞は赤血球を貪食する〔肉芽腫・血管肉腫期〕,③まれに線維化を来す〔退縮期〕.両細胞は多分化能を有する原始間葉系細胞(primitive mesenchymalcell)由来で,比率や分化方向の差により管腔要素の度合も異なる.

 〔予後〕2~8年で死亡.直接死因は消化管・肝の出血.まれに自然治癒( 2 %).エイズ型はエイズの病状に左右される.

 〔治療〕放射線,抗腫瘍剤.

   〔付〕Pseudo Kaposi肉腫〔Earhart 1974〕:趾背にはじまり足背・下腿へ進行するカポジー肉腫類似の暗赤色結節・潰瘍を生ずるが,動静脈異常〔A-V shunt:先天性,外傷性,とくに透析患者〕が基底にあって生ずるものでangiodermatitisに近い. shuntの処置が必要.

〔C〕リンパ腫と白血病

Lymphoma & Leukemia

 リンパ腫は組織球〔マクロファージ〕・B細胞・T細胞の悪性腫瘍で,それぞれホジキンリンパ腫(HL),非ホジキンリンパ腫(NHL),皮膚T細胞リンパ球(CTCL)と称する.わが国ではHL, NHLは少なくCTCLが最も多い.

 CTCL は菌状息肉症,セザリー症候群,紅皮症を伴うT細胞性慢性リンパ性白血病,リンパ腫様丘疹症を一括してLutzner〔1975〕が提唱したものであるが,これらに一致しない結節・腫瘤を主像とするT細胞腫瘍も多く,これをも含めてCTCLを広く考えると整理しやすい.成人T細胞白血病/リンパ腫〔ATLL〕もこれに含めることができる.

 Edelson〔1980〕は表皮親和性〔表皮向性〕(epidermotropism}の有無から2型に分けたが,併存,移行がみられる.

 

横紋筋肉腫、脈管肉腫

横紋筋肉腫rhabdomyosarcoma

   きわめてまれ.口腔粘膜,頭頚部皮下に発生,胎児型・多形型・胞巣型

 6.神経線維肉腫neurofibrosarcoma

 レクリングハウゼン病の皮下神経線維腫あるいは比較的太い神経幹より生ずる.malignant schwannoma.

 

脈管肉腫angiosarcoma

 A.悪性脈管内皮細胞腫malignant arigioendothel ioma

 1) angiosarcoma of the scalp and face of the elderly : 高年者頭顔部に出血性紅斑結節として生じ,きわめて徐々に下行性に拡大,潰瘍化,リンパ節・肺・肝へ転移する.異型内被細胞が増殖,しばしば腔内へ突出する.

 2) Stewart-Treves症候群〔1948〕:乳癌根治手術後その他の原因で高度浮腫を来した上肢に多発する結節で肺等へ転移する.リンパ管・毛細血管由来と考えられる.

 B.悪性血管外皮細胞腫malignant hemangiopericytoma [Stout-Murray 1942]

 皮膚発生はまれで斑または結節を形成.肺転移で死亡することあり.一層の内皮細胞に囲まれた腔の周囲に異型外皮細胞の増殖があり,悪性度は種々.