老年医学的総合評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)

 

 これは疾患診断に加え、抑うつ認知症などの精神機能、さらに身体機能、ADLなどの生活機能、社会・環境や経済的側面含む総合的評価を行うものである((Column) p。15)。これらは理学療法士作業療法上、看護師やソーシャルワーカー臨床心理士など多くの専門職が参加しているチームでよりよくなしうるものである。このCGAに基づきケアした群と、従来型の疾患中心の評価に基づきケアしたコントロール(対照)群とを比較した無作為化対照比較試験もすでに多数報告されている。

 入院患者を対象とした28研究(対象者数9,871人)のメタ分析によれば、CGA群のオッズ比は、コントロール群に比して1年後死亡で14%減少し、1年後の在宅率は26%も高くなっている。

 地域居住高齢者を対象とし、訪問ケアによるナーシングホーム(日本の介護施設に相当)への入所予防や機能低下予防効果を検討した無作為化対照比較試験18研究(対象者数13,447人)のシステマティック・レビューもある。それによれば、(狭義の)医学的側面だけでなく、機能的、心理社会的、環境的側面についても評価して介入計画を立てていた多元的評価群で、機能低下の相対危険率が0.76 (95%信頼区間0.64―0.91)と多元的評価を行っていなかった群に比べ、予防効果が見られた。

3)ケア・マネジメントcare management

 介護保険で有名になったケア・マネジメントとは、ケアマネジャーが、要介護者の多面的なニーズを総合的に評価して、ニーズに応じて、ホームヘルプやデイサービス、入浴サービスなど各種サービスを、組み合わせ(マネジメントし)て提供する方法である。サービスをバラバラに提供する場合に比べ、ケア・マネジメントした群でよい結果をもたらすことが報告されている。例えば、チャリス(ChaⅢs)らは、ケアマネジャーを配置したケア・マネジメント群と従来の方法でケアしたコントロール群とを3年間追跡した結果、ケア・マネジメント群において、1年後の死亡率、施設入所率は低く、本人・家族介護者の抑うっや主観的幸福感などにおいても優れていたと報告している。

2 チーム・マネジメントを分析する視点

 紹介した3つのアプローチの効果がどこから生まれたかを考えるとき、注目すべきは、比較の対照になったコントロール群においても、同じように専門職やサービスが(マネジメントされない形で)提供されていたことである。つまり、治療成績の盖は、専門職の「(狭義の)技術」そのものや提供されたサービス量の違いでなく、「技術システム」としてのチーム・マネジメントの質の差と考えられる。

 ここでは、チーム・マネジメントの質を分析する視点として、分業と協業、および4つのモデルについて考察しよう。

1)分業(分担)と協業(統合)

 チームをつくって仕事をする目的は、一人ではできない仕事をするため、あるいは一人ですべてを行うよりも効率的に仕事を進めるためである。その目的を果たすためには、分業(分担)と協業(統合)が必要である。一人ではできない大きな仕事をするためには、それをいくつかの部分に分ける分業・分担が必要である。分業は、分業された仕事を数多く行う結果、習熟を通じて専門性を高める。