熱傷、火傷の分類と症状、重症度基準

高熱の気体〔火焔を含む〕・液体・固体に触れて生ずる皮膚および粘膜の障害で、重症のものは全身症状を呈する。化学薬品によるものは、化学熱傷という。

〔分類〕深さを基準に分けられる。深さは「温度×時間」で決まる。例えば、湯タンポによるものは、温度が低いが時間が長いので、真皮深層ないし皮下熱傷のことが多く、火焔などによるものは、温度は高いが瞬間的であるので、真皮浅層熱傷にとどまり得る。

 〔症状〕

 1)表皮熱傷:紅斑と浮腫。灼熱感や軽度のひりひりした疼痛がある。数日で治癒。一時的な色素異常のほか後遺症はない。

 2)真皮浅層および深層熱傷:紅斑・浮腫が著明で、24時間以内に水疱を形成、内容は漿液性→ゼリー状と変ずる。破れてびらん面を呈し、分泌液が多く、結痂乾燥して治癒する。深層熱傷はしばしば潰瘍化して遷延する。2~3週を要する。かなり長く色素異常が残り、軽い瘢痕〔萎縮性・肥厚性〕、ときに瘢痕ケロイドを来す。

 3)皮下熱傷:壊死となり、黒褐色の焼痂(eschar、 Brandschorf)で被われ、知覚が消失する。1~2週で分界線を生じ、焼痂は脱落、肉芽組織が生じて、高度の瘢痕・瘢痕ケロイドとなる。関節は拘縮して機能障害を来す。熱傷瘢痕は10~30年後に有棘細胞癌(熱傷瘢痕癌)となることがある。

 〔受傷面積〕治療・予後判定にきわめて重要。

 1)9の法則rule of nines 〔Wallace〕

 身体の主な部位を9を単位として分割したもの〔成人で〕。最も簡単であり、救急の場合にはこれで概算し、加療しながら、次のBerkowの数で修正して精度を高める。

 2) Berkowの数〔Lund-Browder修正〕。

 より詳しくはこの方がよい。 A、 B、 Cの部位は年齢的差異が大で成長とともに脚の比率が高く、頭顔部の比率が低くなる。

 3)5の法則rule of fives 〔Lynch〕

 Berkowの数はやや複雑であるので、年齢差を考慮してより簡単にしたものである。

 〔重症度〕面積・深度より決定する〔Arztの基準〕。

 1)重症熱傷:30%以上の第2度熱傷、 10%以上あるいは顔・手・足・外陰部の第3度熱傷、呼吸器障害・骨折あるいは大きな軟部損傷を合併するもの、電撃傷、深い化学熱傷〔総合病院で入院加療〕。

2)中等度熱傷:15~30%の第2度熱傷、顔・手・足・外陰部を除く部位の10%以下の第3度熱傷〔一般病院で入院加療〕。

 3)軽症熱傷:15%以下の第2度熱傷、2%以下の第3度熱傷〔外来治療〕。

 熱傷指数(burn index)とは第3度熱傷%+l/2第2度熱傷%の数値をいい、これが10~15以上になると、重症熱傷として取り扱う。

 小児・高年者では、この基準より重くみて、注意深く治療する必要がある。

 〔全身症状〕体表面積10%以上では、多少にかかわらずショック症状を起こしうる。

 1)1次ショック:1~2時間後に起こる。血管運動神経の反射による血行障害。

 2)2次ショック:蛋白喪失・血漿減少・電解質平衡の破れ・血液濃縮・溶血などに起因する血行高度障害・臓器酸素不足により起こり、2~48時間で発する。高度発熱・蒼白・四肢冷感・頻脈~徐脈・口渇・血圧降下・乏尿・あくび・精神的興奮・けいれん・嘔吐などの症状を伴い、きわめて危険。

 3)合併症:感染〔化膿・テタヌス~敗血症・肺炎〕。

 4)諸臓器の障害:浮腫による気道閉塞・肝〔うっ血・混濁腫脹・肝細胞変性〕・腎〔lower nephron nephrosis〕・脳〔水腫・軟化〕・心〔心筋変性〕に変性を生じ、後期死因となる。


Side memo

 第1度熱傷=紅斑性熱傷combustio erythematosa、 第2度熱傷=水疱性熱傷c。 bullosa、第3度熱傷=壊死性熱傷c。 escharotica、第4度熱傷=炭化性熱傷c。 carbonisata