「アート」「臨床知」とは

 

 「アート」「臨床知」とは「臨床家の知恵」である。知は、二種類に分けることができるo(アリストテレスはもっと細かく5つに分けている)1つは、言語だけでも(かなり)伝達できる「知識」)が、言語化しても伝達することが難しいもので、「知恵」とか「こつ」にあたるものである。例えば、F自転車の乗り方」やその「こつ」を言葉で説明することはできるoしかし、その説明を聞いたからといって、すぐ自転車に乗れるわけではない。一方、いったん乗り方が身についてしまえば、その後は乗れるのが当たり前になる。

 「アート」「臨床知」とは、臨床家・実践家が身につけている[知恵]とか「こつ」などの総体である。腕のよい臨床家(例えば、ケアマネジャーや臨床医、看護師、医療ソーシャルワーカー、教師など)が身につけている知恵が「アート」「臨床知」であるoその大たちの仕事ぶりを見ると、多くの大が「あの大は優れている」と感じ、F自分がお世話になるならあの大がいい」などと言ったりする。しかし、どこがどのように優れているかを言葉だけでは説明が難しい。まして、その説明を聞いた大が、たちまち腕のよい臨床家になるわけではない。マネして、自ら試行錯誤しながら発見して、身につけるプロセスが必要である。

 これは音楽や美術、演劇など芸術(アート)にも例えられる。見たり聴いたりした大は、他の作品に比べ、どれが「美しい」「優れている」[もう一度聴きたい]などとし感じる」。そして、多く人の感じ方(評価)が一致することがまれでない。一方、優れているとわかっていても、それを簡単にはマネすることはできない。だから、「臨床知」のことを、「アート(art)」と表現するのもうなずける。英和辞書でartの意味を引いてみると、「芸術」や「人文科学」と並んで、「技術、こつ、要領」という意味もある。