多型滲出性紅斑 erythema exsudativum multiforme

 [症状]

 1)頭痛・発熱・関節痛・倦怠感などを前駆症状とし、あるいはこれを欠き、肘頭・膝蓋・手足指趾背など主として四肢伸側に、左右対側吐に小紅斑を生じ、これは遠心性に拡大、米粒大~指頭大〔ときに小児手掌大〕のほば円形の浮腫性紅斑となる。境界明瞭で辺縁はわずかに堤防状に隆起、中央は色淡くやや陥凹する。鮮紅色で滲出傾向があり、新旧入りまじって多型を呈する。ときに水疱性・出血性となる。軽度の痛痒を伴う。環状の中に新しい発疹を生じて二重環となることもある〔虹彩状(e。e。m。iris)〕。まれに粘膜にも生ずる。春夏に多く、また女子に多い。全身症状の比較的軽いものを軽症型<EEM minor)、広範な粘膜病変と高度の全身症状を伴い、ときに予後不良な型を重症型(EEM major)という。

 2)血沈中等度促進、白血球増多、アークロブリン増加、 CRP陽性など。

 〔組織所見〕①真皮型〔斑状・丘疹型〕:血管周囲性単核球〔・好酸球〕浸潤、真皮浅層の浮腫・表皮下水疱、ときに表皮内浮腫・細胞侵入。

 ②表皮型[虹彩型・重症型]:表皮好酸性壊死、単核球・好中球の表皮内侵入、表皮下水疱のため表皮全層壊死または裂隙形成〔TENに似る〕。

 ③混合型〔斑状・丘疹・虹彩型〕:血管周囲性単核球浸潤、液状変性、海綿状態、巣状表皮好酸性壊死、表皮下水疱、出血。

 〔病因〕

 1)感染アレルギー:溶連菌の病巣感染〔扁桃炎、 ASLO値上昇〕、マイコプラズマ症、白癬疹。

 2)ウイルス:特に単純性ウイルスによるものが多く〔herpes-associated erythema multiforme/postherpetic EM〕、 HSVに対するアレルギー性反応〔免疫複合体疾患〕と考えられ、①HS発症1~3週〔平均10日〕に生じ、②青成年に多く、③再発性、④I、Ⅱ両型HSVいずれでも生じ、⑤症状は一般に軽い〔粘膜は殆ど侵されない〕。

 3)薬剤アレルギー:薬疹のEEM型[cEs^p。 189、薬疹〕。サルファ剤・ペニシリン・ピリッ・血清・ワクチン・バルビタール・抗結核剤・抗腫蕩剤・精神安定剤。以上は免疫複合体疾患を思わす。

 4)その他:寒冷〔凍瘡のM型〕、床虫・蟻の刺螫によるアレルギー、膠原病〔とくにSLE〕、内臓悪性腫瘍クローン病。多病因的(polyetiologic)であり、症例毎の病因の追求が必要。

 〔予後〕2~4週で軽い色素沈着を残して治癒するが、再発しやすい。

 〔治療3

 1〕病因追求:それぞれに応じて扁摘・抗生物質、原因薬の除去。

 2)抗ヒ剤・抗アレルギー剤・消炎剤・NSAID、重症時はステロイド投与。

   伸側好発の原則に反して手掌のような屈側のみに発することがあり、反対型(typusinversus; Matzenauer)という。中央退色して辺縁のみ残ったものを環状紅斑(e。rythema circinatum)、これは融合して花環状紅斑(e。gyratum)、蛇行状紅斑(e。 serpiginosum)となる巨大なものを巨大紅斑(e。e。m。giganticum、 Riesenmultiforme}と称するが、これは現在ではスイート病〔Ef p。 139〕に相当すると思われる。水疱形成するものを水疱性紅斑(e。e。m。bullosum)、また紅斑を生ぜず、充実性丘疹を多発するものを丘疹型(papular form)という。