水疱症と膿疱症の症状、治療法など

水疱症bullous dermatoses

 水疱形成を主体とする疾患を総括し〔ウイルス性疾患・熱傷などを除く〕、自己免疫性および先天性遺伝性に2分する。

I。自己免疫性水疱症         Ⅱ。先天性遺伝性水疱症
 1。尋常性天疱瘡           1。単純性先天性表皮水疱症
 2。増殖性天疱瘡           2。萎縮型先天性表皮水疱症
 3。落葉耿天疱瘡           3。優性栄養障害性先天性表皮水疱症
 4。紅斑性天疱瘡           4。劣性栄養障害性先天性表皮水疱症
   [Senear-Usher症候群]
 5。ジュー‘リング疱疹状皮膚炎
 6。〔水疱性〕類天疱瘡
 7。妊娠性疱疹

膿疱症pustulosis

 疱疹状膿痂疹、掌蹠膿疱症、稽留性肢端皮膚炎および角層下膿疱症を一括した。

 無菌的膿疱を主体とし、その病因はいずれも明らかではない。
 
〔症状〕

1)前駆症状:ときに発熱・下痢・嘔吐などがあるが、一般的にはない。

2)皮膚症状:突然健常皮膚に大小種々の水疱が発生、はじめ緊張性であるが、大きくなるとともに弛緩性となり、その疱膜は薄く容易に破れ、大きなびらん面を呈し、疱膜は辺縁にふち取るように残る。びらん面は滲出性で出血しやすく、表皮形成が遅く、しばしば血痂、痂皮に被われ、触れると疼痛がある。あとに一過性の色素沈着を残すが、瘢痕形成はない。痰痒は例外〔痰痒性天疱瘡(p。 pruriginosus)〕を除き、これを欠く。水疱は大きく鶏卵大に及ぶ。健皮部を摩擦すると同じような水疱を形成し、これを二コルスキー(Nikolsky)現象と呼ぶ。また水疱を破れないように圧すると、液が周囲の健皮側に押しこまれ、水疱が周囲に拡大する〔水疱拡散現象(bulla-spread phenomenon)または偽性二コルスキー現象(pseudo-Nikolsky-phenomenon)〕。

 3)部位:皮膚いずれの部位にも生ずるが、圧迫・摩擦の多い背・殿・足・腋窩・鼠径部に好発する。

 4)粘膜症状:口腔粘膜・口唇はほとんどの例で侵され、また半数において初発部位となる。その他、咽喉〔嗄声・嚥下困難〕・鼻・結膜・腟・肛門・膀胱・尿道粘膜も侵される。口唇・口腔では増殖性傾向が強い。粘膜侵襲は85~90%にみられる。

 5)全身症状:発熱・全身衰弱・体重減少・2次感染[特に気管支肺炎・敗血症]を来し重篤。30~60歳代に多く、小児を侵さない。

 6)検査所見:好酸球増多症〔20%以上〕〔末梢血・水疱内容〕、貧血〔Hc<50%〕、血沈促進、低蛋白血症、 A/G比低下、血清電解質代謝障害〔Na・CI・Ca減少、K上昇〕、蛋白尿、抗表皮細胞間物質抗体[ICS]、表皮細胞間にlgG・補体〔C3 ・ Clq ・C、など〕沈着。

  〔疫学〕 ユダヤ系に多く、欧州では地中海沿岸〔イタリア、ギリシャ、アラブ〕に多く北欧に少ない。日本では比較的まれで現在1、000余名か。HLAでA10と相関(?)。

 〔病因〕自己免疫疾患。患者血清中に上皮細胞間物質〔糖蛋白または蛋白〕に対するlgG抗体〔抗上皮細胞間物質抗体pemphigus antibodies〕。

 [組織所見]表皮細胞問結合の解離〔棘融解〕→細胞間浮腫→裂隙形成→水疱形成(suprabasal)。水疱内および真皮に好酸球浸潤、浮腫、離開した棘細胞(acantholytic cells) [ツァンク細胞けzank cell)〕は変性して丸くなり、細胞質は細胞膜側に濃縮し、核側で淡染する。棘融解の起こる前に好酸球の表皮内浸潤の強くみられることもある〔好酸球性海綿状態 eosinophilic spongiosis(Km merson-Wi lson Jones 1969)〕。

 〔診断〕①慢性水疱反復、②全身衰弱、③好酸球増多症、④表皮細胞問にlgGの証明、⑤抗上皮細胞問物質抗体の証明、⑥血清所見、⑦二コルスキー現象、⑧組織所見、

⑨ツァンク試験〔水疱底を掻いて塗抹標本を作りギムザ染色で同細胞を鏡検〕。

 〔鑑別診断〕ジューリング疱疹状皮膚炎〔多彩な皮疹、痰痒、環状配列性小水疱、全身状態良好、 DDS有効、真皮上層にlgA沈着、KJ反応陽性〕、類天疱瘡〔全身状態良好、表皮下水疱、基底膜部にlgGの沈着〕、膿疱疹、熱傷、ライエル病〔急激、薬物中毒〕、水疱型薬疹、水疱型多型滲出性紅斑、皮膚粘膜眼症候群、先天性表皮水疱症。

 〔予後〕死亡率90%以上の予後不良の疾患であったが、ステロイド療法の発達・改善により7。5 %以下となっている。

 〔治療〕①ステロイド剤〔早期に大量(40~60 mg)、漸減、離脱ないし維持量〕、②免疫抑制剤〔サイクロフォスファマイド・アザチオプリン・メソトレキセート・シクロスポリンA〕、③金療法〔シオゾール〕、①局所療法〔抗生物質ステロイド軟膏・亜鉛華軟膏・含嗽液〕、⑤二次感染の注意、⑥補液および栄養補給、⑦血漿交換、⑧薬歴を調べる〔ペニシラミン・リファンピシンによる発症〕。