大理石様皮膚、細網状皮膚、分枝状皮斑

 皮膚末梢循環障害に基因する網目状の紫紅色斑を主徴とする病変をlivedoと呼ぶ。Wertheim〔1932〕は次の3群に分けた。

大理石様皮膚cutis marmorata

細網状皮膚cutis reticularis

分枝状皮斑livedo racemosa

A.大理石様皮膚cutis marmorata 〔付図n-1〕大理石紋理様の紫紅色斑が網状に連なり、のちには褐色調を伴う。その網工は閉じている。多くは長期温熱にさらされる部分に生じ、こたつ・あんか・ストーブ・かいろ・湯たんぽの接する下腿や腹部に多い〔cutis marmorata calorica、 erythema abigne〕。職業性〔溶鉱炉・硝子工・火夫〕のものは露出部に広汎に生ずる。いわゆる

 「ひだこ」。真皮皮下境界部小血管の機能的障害[細小動脈側緊張・静脈側拡張]によるもので、一過性〔暖かい季節に消退〕。

 B.細網状皮膚cutis reticularis

 AとCとの中間型に当たり、臨床像はAに近いが持続性であり、機能的障害の他、小静脈閉塞のように、多少とも器質的変化を伴う。温熱のほか、中枢神経系障害、急性膵炎〔腹胸部にいわゆるGittercyanose〕などでも生ずる。

 C.分枝状皮斑〔網状皮斑〕livedo racemosa〔Ehrmann 1907〕

 四肢伸側、まれに体幹にも生ずる赤褐色斑で、樹枝状~蔓状に連なって、Aと異なり環を閉じない。斑の幅もAに比してやや広くわずかに隆起し、またその中に小硬結を触れる。寒冷や人工的うっ血で増悪するが、温暖で消失せず、持続性である。小動脈が閉塞性となり、静脈側がうっ血拡張する。特発性あるいは寒冷によるほか、結節性多発性動脈炎・梅毒・結核[肺結核・バザン硬結性紅斑]・循環器障害〔心内膜炎・冠動脈不全・動脈硬化症・高血圧〕・リウマチ・皮膚筋炎・SLE ・ dysproteinemia〔特にcryoglobulinemia〕・中枢神経系障害などに合併する。

 組織学的に、Aは機能的変化に留まるが、Bでは小静脈拡張・血管壁浮腫・Peris-tase ・ フィブリン析出などがあり、Cでは、小動脈[ときに小静脈にも]に内膜下フィブリノイド沈着・組織球性肉芽腫様増殖・血管周囲性リンパ球浸潤をみる。いずれも真皮皮下境界部に生ずる〔肢端紫藍症は真皮乳頭下層小血管の機能障害〕。